読書録vol.1『王妃の離婚』

読書 本の虫"見習い"の読書録
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「インテリは権力に屈してはならない」









皆様、2012年と2013年に放送された、「リーガルハイ」というドラマはご存知ですか?

あれ私めっちゃ好きだったんですよ……あの堺雅人演じる古美門先生の長台詞がすっごくかっこいいんですよね。あと、多少汚い場合もありますが、あの鮮やかなやり口がなんとも言えない。
第三期やらないかな……ありそうな終わり方だったけどな……。




さて、そんな私のようにリーガルハイの三期が待ち遠しくてたまらない方に捧げるのが、今回私が読みました、佐藤賢一による『王妃の離婚』。
もちろんリーガルハイを知らなくても楽しめますよ!


内容を端的に表しますと、『中世フランス版リーガルハイ』です。敏腕弁護士がズバズバ切り込んでいく様は、もう見ていてスカッとします。


それではここで状況整理。舞台は先程も述べましたように中世フランス。
主人公であるフランソワ(男)は、学業優秀だったりかわいい彼女いたりとバラ色人生を送っていたけれど、ある出来事により没落。現在はただの田舎弁護士として食い扶持を稼いでいます。

それでもって、そんなフランソワがある日見に行ったのが「ルイ12世離婚裁判」。
当時のフランスの王様であるルイ12世が、妻のジャンヌ妃と別れたいと起こした裁判です。

で、その裁判を起こした理由が驚き。建前上はごちゃごちゃ言ってますが、本音は大きく分けて二つ。

ひとつは「妻のジャンヌが醜いから」
もうひとつは「今付き合っている愛人と再婚したいから」



うーん、ふざけるなと罵倒したくなるような理由。ですが、曲がりなりにも彼は王様。国のトップ。なので裁判はどうなるか……といえば、察しのいい方なら分かるはず。
裁判は「ジャンヌ妃は離婚されて当たり前!
ルイ12世かわいそう!」と出来レースのような、卑劣な裁判が繰り広げられます。


そしてそこで正義感を燃やしたフランソワが立ち上が…………………………らない。


立ち上がらんのかーい、と私もがくっとしましたが、それもそのはず。
フランソワがかつて持っていた幸せを手放す原因になった「ある出来事」は、彼女、ジャンヌ妃の父親によって起こされた物だったのです。
だから、フランソワも最初から「へっ、俺を酷い目にあわせた酷い奴の娘が虐められる姿を高みの見物といくか!」的なノリで見てたわけです。


それでジャンヌ妃は離婚させられちゃいました。おしまい。



なわけありませんよ! 立ち上がらないと見せかけたフランソワがやっぱり立ち上がるのです!

理由はいろいろありますが、ひとつは「インテリは権力に屈してはならない」と。くーっ、かっこいい!


まあここからがこの小説の本番ですよ。言うなればこれまでは読者側のヘイトを貯めまくる時間だったのです。
そして、多くの創作物においてヘイトを貯めたあとはどうなる? もちろん、解消のお時間です。

ここはぜひ読んで味わって頂きたいので多くの説明は控えましょう。端的に言うとこうです。


ずっとフランソワのターン。いわゆる無双状態。


でも、ここで忘れて頂きたくないのが、決してフランソワは正義の弁護士とかいう類ではない点。もちろん汚い手とかも使いますけど……それがいいってとこですよ!




しかし、もちろんずっとフランソワのターンが続くわけではありません。これ以上はネタバレとなってしまいますので伏せておきますね。
ありふれた表現ですが、特にフランソワの参戦からは"一気読み必至"です。




ここまでフランソワ主体で語ってきましたが、登場人物も魅力的だったり癖がありまくったりで飽きません。
特に私のお気に入りはジャンヌ妃ですね。女性とか言う前に「人としての強さ」を持ってて、それがすごくかっこよくて応援したくなります。
対してルイ12世がなぁ……。いや、いいキャラしてますよ。いろんな意味で。彼の登場で話もかなり展開しますし。



でですね。私としてはぜひ皆様に読んでいただきたいんですよ、この本! すっごく面白いから!
しかし、一応注意しておきたいのがひとつ。テーマのひとつが「離婚裁判」ということもあり、いろいろ身も蓋もないです。中世フランスだし。何が身も蓋もないかはお察しください。あと夢もないです。最後にちょっとだけあるけど。そのシーンは最高だけど(脱線)



それなりに読書キャリア積んでる人でも最初は面食らっちゃうようなレベルです。なので読むとしたら高校生頃になってからをオススメします。人間の汚さ、そしてそれが含む面白さもが分かってくる時期だと思うのでそれくらいが一番ちょうどいいと思いますよ(こじつけ)











きっとこの本を読んだ瞬間、あなたも離婚裁判を見守る傍聴者の一人になる。
最後まで目の離せない、どうなるどうなる、とページをめくる手が止まらない。
落ち込んだ時に読めば、謎の自信が湧きそうな、


『王妃の離婚』


気が向きましたら、ぜひご堪能あれ。


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