【文スト小説】怪傑ノ岨

小説 文スト
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:457 hit

最高ランク : 24 , 更新: 2018/01/29 8:05:57

黒煙舞うは怪傑の法螺貝なり。 そんな見出しをよく見かけるようになった。それは専ら 黒染みた新聞の上に一際大きくその存在が如何に偉大か 又唯一無二の存在なのかを無能な群衆に分からせるが如 く書かれており、稀に人伝に市街へその名を轟かせる。 社長の福沢は勿論のこと、太宰治国木田独歩の文字もち らほら見かけるようになった。その中で毎日のようにそ の顔を我々市民に見せるのが江戸川乱歩という探偵だ。 白黒でも分かるほど聡明な顔立ちをしており細く切れ長 の眼が数多の難事件を解決に導いた指揮者なのだと思う と胸の奥から沸き立つものがある。

私は一度、この江戸川乱歩に会ったことがある。あれは いつぞやのまだ武装探偵社が社として未熟だった頃起 こった、とある名探偵殺人事件だったと記憶している。 当時私は横浜altoで開催された名探偵のみを集めたパー ティに北の探偵として他四人と参加した。その日の午前 には――パーティは探偵らしくいこうと紅い月夜の晩に 開催される予定だった――ホテルに着き広いホールに他 四人と共に通された。毛の長い真っ赤なカーペットが印 象的な実に綺麗なホールだった。

そこには私達より先についていた探偵達が各々好きなよ うに残りの探偵を待っていた。支配人によれば東西南ら かく各五人ずつ集めたらしい。どれも陰気臭そうな、も しくはチャラチャラした者ばかりで名前を聞けば全く心 当たりがないほどの者達だった。その中で矢張り江戸川 乱歩の名も聞いたことはなかった。が、江戸川乱歩は私 と名刺交換をした時に一言こう云ったのだ。「君、とび きり田舎の出でしょ。しかも顔ぶれを見る限り雪国の方 だね。差し詰め岩手辺りかな?」と。

勿論交換した名刺には私の出身は記していなかったし、 何より彼はまだ私の名刺を見ていなかったのだ。私の目 の前で、要らないと一言捨ててしまったのだから。まる でシャーロック・ホームズのような手捌きに私は驚いた が彼は風が吹いていると同じくらい平淡に詰まらなさそ うに先程の種明かし――と云うと些か憎き奇術師のよう にズルだと勘違いされそうだが、あの時の私は本当に奇 術を見ているようなそれより気味が悪く楽しい気持ち だった――をしてくれた。彼は私達のズボンの裾を指さ し云った。

「ズボンの裾が濡れていないだろ。今日はこっちでも珍 しく雪が降った。当然雪に慣れていない僕達の裾は雪に 当たってびしょ濡れだ。転んだりしたのも居るらしいし ね。なのに君達の裾は濡れていないどころか靴にも雪が ついていない。雪道の歩き方を心得ている人しか出来な いね。それと後ろの君と君、彼らが方便を使ってた。そ れから――」 といくつもの証拠を私の目の前に突きつけ、最後、君も 名探偵ならこれくらいやって見せては如何だと云い捨て ホールの奥へと消えていった。私は興奮で暫くその場を動けなかった。足が震え頬に汗 が伝う。口角を曲げた瞬間、頭の上で非常に慌てた声で 私達名探偵に収集がかかった。人が一人、死んだらしい。

数分後放送の指示に従って私は二階の応接室に向かった。多くの探偵達に囲まれて死んでたのは、見間違える筈もなく先程まで元気よく都会の探偵どもの鼻先を折ってやるのだと意気込んでいた、私の同胞だった。

流石の私もその時だけは何が何やら分からなくなっていた。見ず知らずの仕事仲間からかけられる言葉だけが確かに耳に伝わる。馬耳東風に近かった。幾多の殺人現場で事件を解決し如何に冷静さが大事だと説いていた私でも同胞の死を眼の当たりにするとこうなってしまうのだ。成る程一般人が慌てふためくのも分かる。残念だったなと誰かが云った。それから応接室は薄く柔らかい膜で覆われたサナギのような居心地の悪さがあった。皆、私に気を使っているのだ。優しくも惨めに責められるその空気を誰も破こうとはしなかった。只一人を除いて。
「さて」間の抜けた軽い少年のような声がした。振り返ると遺体の周りを回っていた江戸川乱歩が腰に手を当て相変わらず詰まらなそうに云った。

「可哀想な北国の探偵を慰めるのもこのぐらいにしろ。お前らは何だ、探偵だろ。しかも脳のない哀れな赤子からは名探偵と呼ばれている者たちだ。さあ、名探偵と名乗るならこの事件を解決してみたまえ。僕らには僕らの遣るべきことがあると、そう思わないのか!」

若き名探偵は一喝すると遺体がもたれ掛かっている革製の上質そうなソファにどかりと座り、腕と足を組んだ。その途端、部屋中から名探偵達の怒声が鳴り響いた。無理もない。彼は僕の同胞の隣に座ったのだから。我々からすると今から調べるというのになんたることをしてくれたのだろうか。
私を悲しんで皆この事件の解決に勤しんではくれているが、もしこの江戸川乱歩が座ったことによりィ……。



はい、ここでおしまい!疲れた!眠い!息抜きの筈が逆に疲れてしまいました。本末転倒です。普段より稚拙な文章しか今は書けません!だって上のやつに全部注ぎ込んだから!はい馬鹿!はい馬鹿!

……いやですね、友人の誕生日にチョロとトドを書こうかと思って遣ってみたらまあ絵心なくてボロッボロになったのはいいんですよ。まだいい。予想はしていました。が、なんと私の持病『遣るならトコトンどこまでも、寧ろ極めてくぜ』病が発症しまして、コピック買って絵もめっちゃ練習しようかと思い始めまして、はい。

昔からなんですけど、流石に今回は大変です。凝りだすと寝食もほったらかしにして、それで一度倒れかけましたからね(笑) いやぁあの時は死ぬかとおもった!うん。
なんだかんだ悩んで、まあ買おうかとは思ったものの次は時間がない。それで憂さ晴らしにとなんとなーくで書き始めたものが、上になります。

今日は疲れたのでもう寝ますね。あ、すもぉるさんっている私がフォローさせて頂いている方がお友達募集してました。文ストも話せるそうなので、興味が出たらどうぞ、検索かけてみてください。

ではでは、Buona notte. Un bel sogno

二代目北斎


投稿を違反報告 / ブロック



らんぽっぽに田舎って言われたw
間違いではないけどw
続き気になる……もし時間あれば書いてほしぃ……


妃有栖
2018/01/29 17:02:51 違反報告 リンク


らんぽっぽはそこら辺容赦ないから(笑) 地元にするか迷ったけど、流石に止めたよ。
気力と時間があったら、もしかするともしかするかも……。


二代目北斎
2018/01/29 17:56:39 違反報告 リンク


コメントをするにはログインが必要です : ログイン


映画、『DEAD APPLE』の感想。ネタバレ表現なし。
2018/03/03 3:43:15 二代目北斎 2 4

これはタイトル通り今日上映されたDEAD APPLEの感想を書き連ねたものですが、全く...



DEAD APPLEのチケット買えた!
2018/02/28 8:03:25 二代目北斎 2

皆さん聞いてくだされ、三月三日全国の幼女、女児、婦人の皆様が可愛く映る日、な...



雑談 友達募集 御友達募集 閲覧注意 把握会 短文 作詞