集団の力、個人の力 【短編小説】

小説
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最高ランク : 5 , 更新: 2023/01/24 12:19:22

「今日の朝、上履きに紙が入っていた。学校に来るな、みたいな内容の」


一時間目の最初、先生はそう告げた。漫画やアニメ、小説などの創作物なら、教室がざわめくところだ。

しかし、自分達の教室は、無情にも静まり返っていた。

窓の外の、風の音だけが聞こえた。

頭の中で、誰の上履きなのか考える。何人かが思い浮かぶ。もはやそうなっている時点で、この学年はおかしいが。


アンケートが配られる。

『1.この事に関係のある人を知っていたら、書いてください
2.この事について見たり聞いたりしたことがあれば、書いてください
3.この事について、どう思いますか。また、より良い学年になるためにはどうすれば良いですか』

先生は言う。

「この時期にこんなことがあるのも、おかしいけどね」

その通りだ。今は三学期。もう次の学年になるというのに、この学年ではいじめが起こった。

半年以上も一緒のクラスにいた分際で、なにが『学校に来るな』だ。

そして、なぜ証拠が残るようなことをする? 前も、こんなことはあった。詳しくは説明されなかったが、影口やら酷いあだ名を言う人がいたらしい。

何で今更なんだ。

疑問をすべて、三番に書いた。


自分は、同じクラスに親友がいない。なんなら、クラスが離れた親友との仲も、最近よろしくない。

それに、友達もいない。

だから、いじめられてもほとんど被害なんてない。自分から人に話しかけるのが苦手で、無視されることもない。

ノーリスクで、いじめられっ子を助けることができる人物である。

だから、自分はいじめがあればすぐ助けようと思っている。ただ、一つ欠点がある。

まわりに興味がない。

今回のいじめの件も、初めて知った。それに、弱虫は、本当にいじめられっ子を助けることができるのだろうか?

わからない。


誰だってそうだ。

未来のことなんて、そのときにならないとわからない。


自分は、本当に人を助ける力があるのだろうか。




これ以上、先生の口からこのいじめの情報が語られることはなかった。

解決したかどうかもわからない。


「はい、みんな席について」

今日の先生は、いつも以上に暗かった。

凄く、凄く嫌な予感がする。気のせいだろうか?


「今日、連絡がありまして······。昨日の夜、Aくんが」










結局、自分は無力だった。

なにもできなかった。どうすることもできなかった。そもそも、主犯どころか何をしているのかも知ることができなかった。

黄色いユリの花を握りしめる。


「ごめんね、助けられなかった」


あの朝、先生は言った。

誰も予想していない、一番最悪な結末だった。






































































「昨日の夜、Aくんが······。自殺で、亡くなりました」

くろねこらいふ


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