【小説】[23:これからも君を](東方二次創作)

神の風をふかしにきたぜ! #この世に一人の俺と君 小説
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最高ランク : 4 , 更新: 2022/09/19 11:22:23


入院生活が終わり、今日は退院の日。
病院の外に出てみれば、雨上がりのじめっとした空気が俺の肌にまとわりつく。
外の空気を吸っていなかったせいか、その風がやけに心地よかった。
そんな中病院の外で俺を待っていたのは
「...もう大丈夫なの?」
「ああ。傷も完治。これでようやく学校に行ける...」
待っていたのは、さとりさんだった。
「とりあえず、買い物行かねぇか?」
「どうして?」
「いやさ...俺の家に食材何もない...」
「...親御さんは...」
「職場が完全に出張先に移っちまった。これから住み込みで働くから帰ってこれないんだと」
「嗚呼...なるほどね」
「うん。それに教科書もなんだかんだ買えてなかったし、書店にもいかないと」
「...わかったわ。でも病み上がりなんだから無理しないでね?」
「病気にはなってないし傷も治ったっつーの」
「大事をとってるのよ。わかって頂戴」
「へいへい」
そんな会話をしながら、俺たちは歩き出す。
新しく変わった、この世界を。


※ ※ ※ ※ ※


俺の入院生活は3週間に及んだ。
結構傷の治りが遅かったらしい。
それから...久々の買い物は楽しかった。
普段一人でする買い物はこんな気持ちにならないのに、さとりとする買い物はどこか楽しい。
どんなゲームをしている時よりも、この買い物してる時間が一番楽しいのだ。
俺たちは昼下がりの公演を荷物とともに歩く。
屋根のあるベンチに二人で腰かけた。
「公園の空気はうまいな...」
「ええ...なんだかそう感じるわね...」
「みずみずしいというか...すがすがしいというか...って感じだな」
「...ええ」
俺たちは中身のない会話をしていく。
それから...しばらくの沈黙。
鳥の鳴き声がわずかに聞こえる。
俺はそんな中さとりさんにある話をはじめた。
「...さとりさん」
「どうしたの?」
「...これからも、さとりさんを守らせてもらっていいか?」
「...え?」
さとりさんはぽかんとした顔を見せる。
俺はそのまま話をつづけた
「...さとりさん。確かに世界は変わったよ。でも俺たち一人一人の人間は変われちゃいない。
苛めっていうのはひとりの人格によって行われる。その人格が改心しない限りいじめや嫌がらせは続いていく。
きっと...それがなくなることはない。
でも、世界が変わったおかげで、きっと少しは減るんだと思う。
...正直言って、心配なんだ。
あなたを一人にしてしまったら...また同じようにいじめを受けて、死のうとしてしまうと思ってしまって。
俺は...あなたに死んでほしくないんだ。苦しんでほしくないんだ
あなたという一人の人間に。
だから...お願い。これからも君を守らせてほしい。」
「...」
さとりさんは、数秒間黙った後、口を開いた。
「...そんなに、私は心配してもらっていたのね。」
「...ああ」
「...ありがとう。とっても嬉しい
私は...一人で耐えてきた。でも、限界は存在したの。
あの日あの屋上で...あなたが助けてくれたから、今の私がある。
私にとってあなたは...最高の友達であり、最高のヒーローなのよ
私を守ることに...許可なんて取らなくていい。
それに、あなたとはもっと仲良くしたいの。
あなたは...とてもいい人だから。
私みたいな人を救える、優しい人だから」
さとりさんは、笑って言っていた。
その笑顔は、苦しみなんて何もない、心からの笑みだと感じた。
「...そっか」
「...ええ」
「...じゃあ、もう一度改めて言うよ」
「別に言わなくていいのに...」
「いいじゃん。言わせてよ」
俺は横に座っているさとりさんの方を向いて言う
「これからも君を守らせてください」
俺は、笑ってそういった。
さとりさんは、それにこう返してきた
「ふふ、なんだか愛の告白みたいね?」
「全然そんなことないよ!?」
「わかってるわよ...これからもよろしくね?」
さとりさんも、笑って言ってきた。
俺たちは、笑った。ほんの少しの時間だが、とてもとても、温かいような、心が晴れ渡るような、そんな時間だった。
「...そろそろ行くか」
「ええ...そうね」
俺たちは立ち上がり、歩き始める。
俺は水たまりを踏む。
その水たまりの水しぶきがパシャッという音とともに拡散される。
その水が地面に落ちると同時に、木の葉にわずかにあった水滴が、水たまりに落ちる
水面に落ちた瞬間。この世界が一気にスローモーションになる感覚に襲われた。
俺は、今まで喧嘩ばかりしていたせいで、気配に敏感だ。
そのため、後ろに急に現れた2人の人影に気づいた。
2人ともこの世とあの世の境目のような、そんな気配を感じた。
一人は女。どことなくさとりさんに雰囲気が似ている。
もう一人は男。この気配は...裕也?
「...!」
一気に体の感覚が戻り、俺は後ろを向く。
もちろん。そこには誰もいなかった。
だけれど、あれは間違いなく______
「...どうしたの?狂夜」
「...いや、俺たちは家族にずっと見守られてるんだなって...思っただけさ」
俺は微笑んでさとりにそう答えた。
紅葉の葉っぱが落ちる頃。
外の寒さも厳しくなってきた。
けれど、俺たちを照らす西日は、そんな寒さにも負けないほど

温かく感じた。








1年生編。END

神風はやと@ゆ茶劇制作中


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涙腺崩壊…最後やばいって(´;ω;`)ウッ…

なうなうみるきぃ
2022/09/19 7:22:13 違反報告 リンク