【完結】小さな幸せ【短編詰め合わせ】

短編集 カタツムリ
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最高ランク : 34 , 更新: 2017/08/18 9:43:55


今回はこれをネタにして書きます。

本当は一個の作品にしようかと思ったんですが、

予想以上に短くなりそうなので(苦笑)

短編集にしていきます。

すこしお待ちを

ーー
「些細な日常に、ほんの少しの幸せを」

注意

・BL,nmmnの作品です。

・歌い手様のお名前をお借りしています。

・ご本人様とは一切関係ありません。

・以上理解してお読みください。

好きな人の声を聴けるって素敵な事なんだろうな、
と想像して、どうせなら短編集にしようと考えました。
一緒に幸せな、ほっこりした気持ちになっていただけると嬉しいです。

ーーー
Mside

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁおわったよぉぉぉおぉぉ」

先程まで使っていたパソコンを閉じて
勢いのまま叫ぶ。

ちゃんと防音になってるから、
苦情がくるとかの心配はいらない。

ふと時計を見れば、
夜の8時過ぎを指していた。

お昼食べたとこから動いた記憶ないから、
7、8時間くらいぶっ通しでやってたのか···

立ち上がってググっと伸びをすると、
コキコキと関節が音をたてた。

肩も凝ってるし、本当に疲れた···

お風呂とかご飯とかやらなきゃなんだけど、
ベッドに倒れ込んだからもう動きたくない···

あーだのうーだの唸りながら眠気と格闘していれば、
すこし遠くにスマホの着信音が聞こえた。

気を抜けば意識が夢の中に落ちていってしまいそうな中、
なんとか体を起こして画面をスライドさせる。

「もしもし···?」

相手も見ずに取ってしまったけど
誰だったんだろう···

luzくんとかかな?ご飯のお誘いかな···

『もしもし?まふまふ今平気?』

僕がそう予想をたてるけど、
それは呆気なく外れ、というか、

その予想の遥か斜め上をきた。

「そ、そらるさん!?え、あ、平気ですよ!」

低く心地のいい声を聞いて、
眠気なんか一気に吹き飛んだ。

あるのはちょっとの驚きと、
心が満たされるような幸福感。

そらるさんは、僕の相棒で、恩人で、
好きな人で、恋人で、とりあえずとても大事な人。

そんな大好きな彼からの電話で幸せだと感じるのだから、
僕はきっと単純だ。

「どうしたんですか?お仕事?」

『いいや?まふまふの声聞きたくて。』

僕が疑問をぶつけると、
そらるさんは予想外の返事を返した。

なんなんだこの人、僕の心臓壊す気か···!

思わぬ不意打ちの一撃に、
僕の体は一気に熱を持った。

なんとか平常心を取り戻そうと心がけて、
ただ一言、そうですか、とだけ返事を返す。

『素っ気ないなぁ、そらるさんに
こんなこと言われても嬉しくない?』

少しだけ拗ねたような声でそんなことを言われた。

「ま、まさか!めっちゃ嬉しいです!!!ぁ···」

それに慌てて勢いに任せてそう言うけれど、

よくよく考えればこれ、
すごく恥ずかしいことを言っているような···

そらるさんがクスクス笑っているのが聞こえてきて、
からかわれていたんだと分かった。

気付いたら次は恥ずかしさで顔から噴火しそうだ。

ほんとに、そらるさんにはいろんな意味で敵わない。

『というか、また作業溜め込んでたんだろ?
お前体弱いんだから、ほどほどにしとけよ。』

「そらるさんだって言えた立場じゃないでしょう?
僕は大丈夫ですよ」

心配性な彼がすこしおかしくて、
次は僕がクスクスと笑い声を上げてしまった。

それが気に入らなかったのか、
拗ねたような声が聞こえる。

『笑うなよ、そらるさんはだーいじなまふまふさんが
体を壊さないか心配してあげてるんですー』

「んなっ···そらるさんそれはずるいです!!

ぼくがそういうのに弱いこと
わかってやってるでしょう!」

『そりゃあまふまふさん単純だし?』

「あ!ひどい!単純っていった!」

確かに自覚はあるけども!

僕がムキになっても、そらるさんは
はいはい、と軽くあしらって話題を変えた。

なんか悔しい···

『んで?ご飯と風呂済ませたの?』

「いや、まだですけど···?
ベッドに入ったらなんか、

もういっか、ってなっちゃって···」

ぼそぼそと言い訳をする僕に、
そらるさんはあからさまにため息をついた。

『はぁ···そんなんだから体壊すんだよ。
まぁ今回頑張ったのはわかったから、

今すぐ寝ることを条件に許してやろう。』

「なんですか?それ」

そらるさんのちょっと上から目線の言葉が面白くて、
ケラケラと声をあげて笑う。

けど、そらるさんはどうやら本気だったようだ。

『はいはい、さっさと電気消してベッド入って、
大人しく横になりなさい。』

そらるさんは僕のお母さんですか、
という言葉をグッと呑み込んで、

大人しく言われた通りにベッドに入った。

「はい、入りましたよ?寝たらいいんですか?」

『そう。明日は打ち合わせだっただろ?
朝早いし、ゆっくり休め。

朝は起こしに行ってやるから。』

「あぁ、それは、お願いします···」

エアコンのきいた部屋の中。

すこしあったかい毛布に包まると、
再び眠気が襲ってきて、ひとつあくびがでた。

「ねぇそらるさん〜、
せっかくなら子守唄歌ってくださいよ〜」

ふわふわと心地好い思考の中で、
そらるさんにそんなことを頼む。

向こうから、はぁ?って聞こえた気がしたけど、
仕方ないな、ってことは歌ってくれるようだ。

すうっ、と息を吸う音が聞こえた後、
柔らかいそらるさんの声が耳に響いた。

よく考えたらこれ、すごい贅沢かも···

のんびりとした曲調、
優しいそらるさんの声、

全てが眠気に直結して、
すぐに僕の意識が薄くなる。

電話の向こうから寝たかな?
という声がくぐもって聞こえた。

『おやすみ、まふまふ』

そんな声を聞いた気がしたあと、
僕の意識は夢の中へと落ちていった。

今日は、いい夢が見れそうだ···


【優しい声に微睡みの時間】




Sside

朝起きて、ぐーっと伸びをして、
顔洗って、くせっ毛を荒く直して、

軽い朝飯を食べながらテレビをみる、

珍しく、朝のめざまし番組が始まる、
そんな明け方早くに目が覚めた。

いつもなら二度寝していたかも知れないが、
あいにく今日はまふまふと一緒の、

つまりはAftertheRainとしての打ち合わせが、
10時頃から予定として入っていた。

朝食であるパンを口に入れながら、
ふとテレビへと視線を移すと、

降水確率が50%で折りたたみ傘が便利だろう
というような事を話している。

最悪だ、なんでまた、
よりにもよって今日なんだ···

タイミングの悪さを恨みながら、
折りたたみ傘なんてあったかなぁ、

と、玄関に思考を巡らせた。

雨の日の外は苦手だ。

傘をさしているせいで視界が遮られて、
周りがいつも以上に息苦しく感じる。

おまけにジメジメとした微妙な気温や
暗い天気は、気分まで一緒に落ち込ませる様で、

どうにも好きになれない。

しかし、当然ながら
雨の日が嫌だから打ち合わせをずらす···

なんて勝手は、大人であり、それを仕事として
食べている人間にはできるはずもない。

一つため息をついて、空になったお皿を
シンクにつけると行動を始める。

折りたたみ傘なんていつぶりに使うだろうか。

そもそも家にそんな物があっただろうか。

もともと物を失くしやすいのは、
俺の悪いところだという自覚はある。

行方不明になっているそれを見つけるのは
当たり前ながらそこそこの時間と労力を使い、

結果的に、ベッドサイドの机の棚、
その一番下の奥から探しものを見つけた時には、

慌てて身支度を整えることになったのだった。


*******


「お疲れ様でしたー!お二人共、
よろしければこの後すこしどうでしょう?

ちょうどお昼時ですし···」

今日の打ち合わせの相手であった女性が、
打ち合わせが終わったあとに声を掛けてきた。

え、あ、と訳の分からない
言葉を発しているまふまふを横目に、

すみません、先約があるので···

と、いわゆる営業スマイルで返事をする。

もちろん先約なんて嘘である。

多少罪悪感はあるものの、許して欲しい。

なんせおれもまふまふも、

親しくない人との食事なんか
極力避けたいタイプであるのだから。

そうですか、と残念がる女性にもう1度謝り、
まふまふを連れて建物を出た。

「うわぁ···」

隣のまふまふが、思わず、
と言った感じで声を漏らした。

それも仕方ないだろう。

空には厚い雲がかかり、
降っているのは大粒の雨。

傘があったとしても歩いて帰るのが
欝になりそうな大雨に、

俺もたまらずため息をついた。

持ってきていて良かった、
と朝の自分の行動を心の中で褒めながら、

バッグの中から傘を取り出す。

それを広げてからチラリとまふまふを見ると、
焦点のあっていないような目でぼーっと空を見ていた。

「まふまふ?」

どうした?と声をかけると
ハッとしたように顔をこちらに向ける。

「あ、いや、大丈夫、平気です、」

明らかに挙動不審だ。

なんでも隠そうとするのは、
まふまふの悪い癖。

「あ、もしかして傘忘れた?」

ひとつ思い当たったことを告げてみれば、
慌てたようにあ、そ、そうです!と、

少々不自然ながらに頷いた。

「はぁ、そんなこと?仕方ないな···
ほら、いくぞ」

「え、ちょ、そらるさん!?」

驚いたように声を上げるまふまふの手を引き、
自分の傘に引き入れて歩く。

「え、あ、ちょ、ここ外ですよ!」

なぜか小さな声で
コソコソと話しかけてくるまふまふ。

そんな様子がおかしくて思わず笑い声を上げた。

「まふまふ、さっきから挙動不審すぎ、
ちょっとは落ち着けよ」

落ち着けるわけないでしょう!と
文句を言うまふまふを受け流して

濡れるからこっちこい、と肩を寄せる。

顔を赤くして黙ったから、
これは俺の勝ちだろう。

してやったり、と笑みを浮かべていれば、
何を思ったかまふまふが不服そうにこちらを睨む。

それに気付かないふりをしながら、
隣から香る甘い匂いに少し酔っていた。


*******


ガチャン、と扉が閉じる音がした後、
ふう、とため息をついた。

「あー、なんか無駄に疲れた···」

濡れた肩をパタパタと叩くと、ごめんなさい、
とあからさまに落ち込んだ声がかけられ、

申し訳なさそうにタオルを差し出された。

「大丈夫だって。その代わり風呂かしてよ。」

少し笑ってそう言ってやれば、
はい!と返事をした後、

コーヒー入れてきますね、と
キッチンまでかけていった。

あの後、2人で雨の中帰ったはいいものの、
ひどい雨のせいで傘はほとんどその意味を成さず、

結果途中から二人してかけあしで帰ってきた。

そのまま一刻も早く雨から逃れたい、
着替えたい、ということで、

俺も一緒に1階下のまふまふの部屋に
お邪魔させてもらうことになったのだ。

「そらるさーん、出来ましたよー」

リビングの方から聞こえたまふまふの声と、
美味しそうなコーヒーの香り。

それにつられるように、
タオルであらかた水分をとって、

リビングへと向かった。

まふまふはもうイスに座っていて、
機嫌がいいのかにこにこして

その手にはココアを握っている。

俺もまふまふに向かい合うようにイスに腰掛けた。

コーヒーカップを手に取ると、
じんわりと手が温もっていくのが分かった。

「お風呂今沸かしてるので!
ちょっとまってくださね」

まふまふが上機嫌のままそう告げた。

その笑う顔に、あぁ、可愛いなぁ、なんて。

「まふまふ、なんか機嫌いいね」

「え!い、いや、そ、そうですか?」

自覚が無かったのか、
指摘してやればぺたぺたと自分の顔を触り出す。

そんな様子にクスクスわらって、
立ち上がって机越しにぐいっと顔を近づけた。

「でも、上機嫌なまふまふ、かわいい、」

「へ?」

耳元でそう囁いてやれば、
驚いたように顔をこちらを向ける。

まふまふの顔があまりにも近くて。

なぜだかすごく甘い香りがして。

たまらず、その唇にキスを落とした。

そのまま舌をすべらせて、
唇、歯列、上顎、となぞっていく。

まふまふから小さく、
んっ、と声があがると、

それが合図だったかのように
俺の服をぎゅっと握りしめた。

静かな部屋に響くのは、
雨音と、それとは全く違う水音。

「っ、はぁ···なんで、いきなり···」

苦しいじゃないか、とでも言うように
俺を睨んでくるけど、

そもそもまふまふは座ってて、
必然的に上目遣いになるわけだし、

酸欠のせいか涙目になっているのだから、
睨まれてもただただかわいいだけだ。

可愛い彼女の可愛い抵抗を、
文字通り受け流すと、

ふと思ったことを口にだした。

「というか、まふまふが
傘もってなかったとか珍しいよな。

いつもバッグの中に
お気に入りのやつ入れてるだろ?」

しばらく前にまふまふから、
可愛いでしょう?と、

白猫のワンポイントが入った
黒い折りたたみ傘を見せられた記憶がある。

それからバッグの中に入っているのを、
チラチラと見かけた記憶もあるのだが。

特に他意はなくて、ただ単純に、
あの傘がどこにいったのかを

聞いたつもりだった、のだが。

まふまふは一瞬ポカンとして、
その後なぜだか下を向いた。

「···と····て······たら···」

「え?」

そのままぼそぼそと話す言葉が
聞き取れなくて、まふまふに聞き返す。

ゆっくりと再び上げられた顔は、
耳まで紅く染められていて。

そして。

「わざと、っていったら、どうしますか···」

言葉の意味を、すぐには
理解出来なくて黙ったままでいると、

何を思ったのか、泣きそうな声で
まふまふが話を続けた。

「最近、全然、その、
恋人らしこととか、してないから、

あさ、天気予報見て、
今日雨ふるかもしれないんだな、

傘わすれていったら、近い距離で、
並んで歩く理由にならないかな、って」

雨の日によく香る香水も付けたんだ、と、
そうまふまふが言い終わると同時に、

ぎゅっとその体を抱きしめた。

雨はいつの間にか止んでいたらしく、
聞こえたのは、虹だ!と騒ぐ子供の声。

「はああああ···」

抱きしめたままで耳元で大きく息をはくと、
まふまふがびくりと肩を揺らした。

それに構うこともなく、
抱きしめる力を強くする。

「あーもう、何お前、ほんとに可愛すぎ···」

え、とまふまふが小さく、
驚きの声を上げるのが聞こえた。

「幻滅、しないんですか···、だって、
ぼくのせいでそらるさん濡れちゃって、

そらるさんの好意、利用したみたいで···」

嫌われたとでも思っていたのだろう。

今にも泣きそうな声で、
というか、すでに泣いているような声で、

そんなことを言ってくる。

バカだなぁ、そんなことで
嫌いになるわけないのに。

「幻滅なんてしないよ?
だってそれ、まふまふがそれだけ、

俺のこと好きって証明でしょ?」

そう問うてやれば、
恥ずかしそうに、でも嬉しそうに小さく頷く。

「じゃあただの可愛いわがままだよ。
お前が俺の隣にいる理由なんて、

俺の恋人だから、ってだけで充分。」

そう言って笑うと、まふまふは
嬉しそうに抱きしめる力を強くする。

「ほんと、まふまふは俺を
いっぱいいっぱいにするの上手いよね」

ただでさえいつもお前の事考えてるのに。

なんて、我ながら恥ずかしいセリフだ。

それでも、そんな言葉がスルスルとでてきた。

案の定まふまふはこれ以上ない程
耳まで紅く染めていて。

その頬に軽くキスを落とせば、
少々不満そうに、

まふまふは、え、とだけ声を漏らした。

そして刹那。

「きすは、こっち···」

そんなまふまふの声と、
ふわりと香った甘い匂い。

柔らかいものが唇に触れた。

「っ、おまえ、」

してやったり、と、まふまふが笑う。

「えへへ、きす、しちゃった、」

って、ほんと可愛すぎだから。

可愛いイタズラに思わず頬を緩ませて、
もう一度唇をかさねる。

「···雨やんでも、
ずっと俺の隣歩主いててよ。

理由なんて、小さなことでいいから」

俺は、まふまふの隣がいいから。

まふまふはそれに、嬉しそうに頷いた。


晴れてても曇ってても雨が降ってても。

俺が隣にいたいのはお前だけ。

それだけで、充分だから。

【隣にいる理由】



Mside

がやがやざわざわ、

周りには人ばかりで、
ちょっと動くだけでも一苦労だ。

そんな人混みの中でも、
僕の目は簡単に彼をみつけた。

気に寄りかかって周りを見渡している、
1人の男性。

黒いくせっ毛に少し眠そうな奥二重の瞳、
下唇だけあつい唇は美しいピンク色で、

白い肌によく映える。

ほんとに、美しい人だ。

「そらるさん!」

そんな彼に声をかけると、
目線をこちらへむける。

ドキリ、と、

目があった瞬間、
そう心臓が音を立てた気がした。

こんなの、久しぶりだ。

白い肌によく映える、
紺色の甚平を来ている彼は、

僕を振り返ると少しだけ笑った。

「あ、すみません、待ちましたか···?」

「んーん。平気俺もさっき来たとこだから。
それじゃあ行こっか。」

あれ、なんだか素っ気ない、

せっかく浴衣きてきたから、
なにか言ってくれるかな、って思ったのに

なんて、女々しい僕のことを
そらるさんはしりつくしているらしい。

「あ、そうだ、浴衣、にあってるよ」

そう微笑みながら告げて、
そらるさんは前を歩いていく。

ぶわぁと顔が赤くなっていくのがわかった。

なんなのそらるさん、
僕の心読めてるの···!?

「ぁ···ありがとうございます···
そ、そらるさんも、その、かっこいい、です···」

「ん、ありがと」

平常心、平常心と心で呟きながら
必死に答えるけど、

彼はまた余裕な顔をして、
次は僕の手をにぎって歩きだした。

「へ!?そ、そらるさん!?」

ここ外ですよ!
誰かに見られたらどうするんですか!

そんな言葉達は口に出されることはなく、
彼のしーっ、という言葉だけで封じられた。

ちょっと目を細めて、
右手の人差し指を唇にあてて。

その仕草がどうしようもなく色っぽくて、
簡単に黙らされる。

「ほら、さっさといくよ」

「は、はい」

そのままぐいぐいと引っ張れて、
どこにいくんだ、と聞く暇もなく、

僕はそらるさんについて行った。



「あー、つかれた···」

そらるさんがふぅ、と
息を吐いて僕の方に向き直った。

「ね、ここ穴場でしょ?」

そらるさんに連いていけば、
人は少しずつ減っていって、

いつの間にかまわりには
ポツポツと人影が見える程度になっていた。

「そう、ですね、
よく知ってましたね、そらるさん」

そう言って彼に笑いかけた。



笑えていた、だろうか。

変じゃない、だろうか。

「まふまふ···?」

なんで僕は、

「そ、らる、さん···」

泣いているんだろうか。

「···とりあえず、座って。泣きやめよ。」

そう言ってそらるさんは
頭をポンポンと撫でてくれた。

「さっき、屋台にいったとき···」

その温かさが心地よくて、
ぽつりぽつりと僕は話し出す。

ついさっき、ここまでくる道の途中で。

屋台にでていたお肉が美味しそうだったから、
そらるさんにひとこと言って、

ひとりで並んでた。

そしたら、僕の順番が来た時、
屋台のおじさんに、

「お兄さん1人?かっこいんだから、
早くいい人見つかるといいな、」

って、そういわれたんだ。

それがなんなの、って
思われるかもしれないけれど

僕には、ちゃんとそらるさんっていう
大好きな、大切な人がいるのに、

それを伝えることはできなくて。

それが辛くて、

そらるさんにも
そういう思いをさせてるかと思うと、

それも辛くて、

仕方ない、って、分かってはいるんだけど、

「なんだか、無性に悔しくって、
どうしようもなくかなしくなって、」

泣けてきちゃいました、

そういってそらるさんに笑いかけると、
無言で痛いくらい抱きしめられた。

「え、ちょ、そらるさ」

「ごめん···」

「え、」

「そんな思いさせて、ごめん。
そりゃ、胸張って言える関係じゃないよな

周りに隠し続けるのも辛いよな。ごめん。

でも俺はまふまふが好きだから。
ほんとにごめん」

そらるさんの手か震えている気がして、
僕も堪らず抱きしめ返す。

「それ、ズルくないですか···」

ぽつりと漏れた言葉は、
そらるさんに聞こえていただろうか。

「そんなこと言われたら、
言い返せないじゃないですか。

僕だって、そらるさんが大好きなんです。
だから、いいです···

ちょっと弱気になっちゃいました、
でも、もう大丈夫。」

そらるさんが顔をあげると、
自然と目が合って、顔が近づく。

唇が触れ合った、その瞬間。

大きな音とともに、花火が上がった。

「ロマンチック、ですね···」

「お前、こういうの好きそうだもんな」

そう言ってそらるさんは笑った。

その横顔は、花火に照らされて、
あまりにも綺麗で。

「もう、大丈夫です、
迷ったりしませんよ、

そらるさんが隣にいてくれるのなら、
周りなんて怖くないです」

僕も笑い返した。

あぁ、幸せだ。

彼の隣にいれば、
何でもできるような気がしてしまう、

だから僕は、隣にいよう。

彼と一緒にいたいから、

彼と全てを、乗り越えていくために。

【あなたの隣、夏の夜】

カタツムリ


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