初投稿【小説】総集編 夜逃げされた少年少女(東方二次創作)

#白銀の狙撃手 小説 #夜逃げされた少年少女
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初投稿です
白銀狂夜(シロガネキョウヤ)と申します
誰だかはもうお分かりしている人が多いと思います。
前垢のお知らせをちゃんと見てくださいね
無言いいね、無言フォロー、ご自由にどうぞ。
フォロバ率は100%です
本編スタートです








俺には、幼馴染みがいる。
幼馴染みであり、腐れ縁でもある。
俺の名前は神風はやと。高校二年生。
今日も今日とてクラスの窓際一番後ろの自分の席に座る。
そして隣には。
「...おはよう」
「おはよ。」
元気がない少女から、おはようと声をかけられる。
ボサッとした髪に、一度も洗われてない制服。
ひときわ目立つ大きな青いリボンが彼女の象徴だった。
そう。この依神紫苑こそが、俺の幼馴染みであり、腐れ縁の持ち主である。
なぜ腐れ縁なのかを説明すると、
俺たちは...二人とも親に夜逃げされたのだ。
しかも5年前の同時期。偶然とは思えないくらいに。
夜逃げされた理由としては両方の家族どちらも会社経営が上手く行かなかったからだ。
結果として二人とも夜逃げされた。マジで不幸だな俺達。
して、どうやって生きているのかというと、
近隣住民に助けて貰って生活保護を受け、
知り合いのアパートの大家さんに二人一部屋で部屋を"無償で"貸してもらった。
アパートの大家は投資もしているらしく、
「あんたら二人無料で住まわせたって私らは破産しねぇよ」
と大家のおばさんがいっていた。頭が本当に上がらない。
んで高校に入ってからは生活保護を受けず、二人とも学校に理由を説明してバイトして働いている。
生活は良くないが、苦しい訳でもない。
それに、俺はこの毎日を気に入っている。
ぼちぼちな生活をして、ぼちぼち生きて行く。
夜逃げされた俺からすればこれほど嬉しい事はない。
と、そんなことを考えているとチャイムがなる。
先生がホームルームがどうとか言って入ってきた。
俺は紫苑に
[今日も1日頑張ろうな]
と書いた紙を投げつける。
紫苑は中身を覗くと、こくりと頷いた。
俺は今日も1日、ぼちぼちな生活を送ろうと思っていた。


※ ※ ※ ※ ※


「疲れた...」
「はいはい。お疲れ様。」
PM20:00。住宅街。
バイトして疲れきった紫苑に安いエナドリ(言うならリ○ルゴールド)を渡すとそれをぐびぐび飲んでいく。
「ぷはぁ...そもそも私のバイトきつすぎ...接客とか私この姿でできるわけないよ...」
「配達、厨房、接客全部やらされる俺の気持ちわかって言ってるか?」
「...ごめんなさい」
へこたれている紫苑に俺がどれだけ大変なのかを伝える。
そう。紫苑は永遠にファミレスで接客をさせられているらしいが、
俺は時給がいいからと某ハンバーガー店で働いてるためバイク乗り回して配達しながら厨房やったり接客したりしている。
バイクの免許は生活保護のお金を少しためておいてそのお金を16歳の誕生日と同時に運転免許書の講習費にぶちこんだ。
して、とぼとぼ歩いていると何だかんだでアパートに着く。
部屋は広いわけではないが、風呂、トイレ、キッチン完備の最強アパートだ。部屋は10畳のリビングとその他もろもろしかないが。
家の鍵を開けて中に入る。
「ただいまー」
当然、家の中は静まり返っている。
俺はとりあえず冷蔵庫に買ってきた食材を入れて、直ぐに服を着替える。
紫苑は風呂場でいつも着替えるからそこら辺は安心したまえ。
して、直ぐに着替えると俺は早速夕飯の準備。紫苑は折り畳み式のテーブルを準備している。
ささっとゴーヤチャンプルを作って、昨日のうちに炊いて24時間保温しておいたご飯を茶碗に盛る。
一通り準備して紫苑を確認。
「そっち準備できたー?」
「うん。大丈夫」
確かにテーブルが置かれその上は綺麗にだいふきで拭かれていた。
俺はご飯を早速運んで
「「いただきます」」
直ぐに二人で食べ始めた。
俺は咄嗟にラジオを着ける。
今日のニュースと明日の天気予報を確認しつつ飯を食べている。
「そろそろテレビ買いたいよなぁ」
「そんな裕福な物私たちに買えるの?」
「俺達がバイト頑張れば」
「私は無理かなぁ...」
そんな他愛もない会話をして数分後、俺達は汚れ一つ見当たらないくらい綺麗に飯を食べきった。食べれるものはきちんと食べるのが俺たちの教訓だ。
して俺はささっと洗い物をして、紫苑と二人で課題を消費する。
その時エナドリを飲むのだが今日は少し違った。
「...ん?何これ?」
紫苑が不思議そうに小瓶のドリンクを見つめる。
「ああ。面白そうだから買ってみた。飲んでみて?」
俺はその小瓶の中身を飲むように催促する。
因みに薬局では強めのエナドリと書いてあった上破格だったから買ってみただけだ。
「...?」
紫苑は不思議そうに中を飲み干す。
「...特に何も変わらない...か...な...」
「...どした?」
途中から紫苑の息が詰まっており、俺は思わず聞き返す
よく見ると紫苑の顔が赤くなっている。熱でも出たのだろうか。
「...風邪か?」
「ちょっ...違うから...」
「いや、万が一があるから」
そう言い俺は紫苑の額をさわる。
昔から一緒に居たためボデイタッチとかは平然とするのだ。
だが、紫苑はいつもと違い
「触るなぁ!」
と、叫んで俺の手を撥ね飛ばした。
「叫ぶな!近隣住民に迷惑かかるだろうが!」
「...ごめんなさい...」
俺はとりあえず叱って課題に戻る。
紫苑も平然と課題に戻っていった。
...だが数十分後。
「...もう無理!」
紫苑は机を叩くと押し入れから敷布団を取り出して乱雑に敷くと布団の中に入ってしまった。
「おい。まだ課題残って...」
「やっておいて」
「は?自分の課題は自分で...」
「やっておいて!」
「...はい」
布団のせいで顔は見えないが、とにかく何か怒っているのは間違いない。
あの小瓶の飲み物を飲んでからだ。
...俺は小瓶を手に取りラベルを見回す。
表向きにはエナドリと書いてあるが、裏側をよく見ると、
「...惚れ薬?」
ちっさな文字で「惚れ薬」と書いてあるのに気づいた。
「...やっちまったな」
俺はそう呟き、紫苑の様子を見ながら課題に手を着けるのだった。
勿論。紫苑の分まで....




朝、敷き布団の上で目を覚ます。
起き上がると朝の五時。結構早めに起きたようだ。
「おはよう...なんだか二人とも早起きしちゃったね」
先に起きていたらしい紫苑がキッチンで朝ごはんを作りつつ俺に話しかけてきた。
「ああ...こんなに朝早いのに...」
五時と言えど空はもう明るく、部屋のカーテンを開けるとまぶしい日の光が差し込んでくる。
「...洗濯物取り込む」
「了解」
俺はベランダに干しておいた洗濯物を黙々と取り込む。
すると、あることに気付いた。
「あれ...服縮んでね?」
「そうかな?」
紫苑が料理の手を止めたので、服を紫苑にも見せる。
確かに一回りほど小さくなっている。それも全ての服が。
「...貧乏精神で4年前から使うべきじゃなかったかなぁ...」
「お陰で服のお金を食費に入れられたからいいじゃん」
紫苑は苦笑いしつつそう言ってきた。それに4年も使っているのに俺の服は案外汚れていないのは笑える。
日付を確認。今日は休日。
「...久々に買い物する?」
「お金あるの?」
ご飯の準備を済ませた紫苑は不思議そうに俺に金があるか聞いてくる。
財布には...手持ちで1800円。
貯金には、まぁ...バイト頑張った分がしっかり報われている量が。
「まぁ...俺はあるから、いこうぜ」
「なら私は恵んで貰お~」
「やめろ。俺だって裕福じゃないんだ」
二人で食卓にご飯を並べながら他愛もない会話をして。
テーブルのそばに座ると、二人で手を合わせて
「「いただきます」」
といい朝飯に手をつけるのだった...


※ ※ ※ ※ ※


「こうやって二人での買い物は初めてじゃない?」
「小学生のころ家族ぐるみで買い物来たとき以来だと思う」
「もう、そうやって楽しく来ることもないのかな」
「今来てるだろ」
「...それもそうだね」
ショッピングモールにて、俺達は色々買い物をしていた。
俺達は腐っても幼馴染み。夜逃げされる前は家族ぐるみで楽しくしていたのだ。
俺達はとりあえず洋服を一通り買った。ついでに紫苑の分まで。
ただ紫苑に選ばせたらファッションセンスが無さすぎたからほとんどの服は俺が選んだ。
そして紫苑の私物を俺のおごりでいくらか購入。
俺の貯金がほんのすこし軽くなった。
「じゃあ、買う物買ったし帰るか」
「うん。早くお昼ご飯食べたいしね」
「...。」
俺たちは帰路を辿ろうと始めたとき、少し目に入った店があった。
「どうしたの?...外食店?」
そう。俺が見ていたのは外食店。
小学生来たとき以来贅沢なんてしてる暇無かったから一度も来ていなかった。
「...いかん。欲望に負けそう」
「たまには負けてもいいんじゃない?」
「俺は奢らんぞ」
「じゃあ勝って」
「手のひら返すの早いな...」
店の前で右往左往していたが、決めた。
「...まぁ、たまには贅沢もありか」
「えぇ~...」
「奢るから」
「今すぐいこう」
「だから手のひら返し...」
紫苑の手のひらの返し具合と言ったら...
俺は苦笑いしながら店の中に入った


※ ※ ※ ※ ※


して、飲食店の中に入る
中はイタリアをイメージした店内で、時間が時間でかなり混んでいた。
店員に人数を教えると席に誘導される。席に座って紫苑をみるとなんだか動きがせわしなかった
「あまりはしゃぐなよ」
「逆に初めての外食で興奮しないって言うの?」
「少なくとも俺はしていない」
「…」
他愛もない会話をすると、二人でメニューを眺める。
長考の末に店員を呼んで
「温泉卵のせグリーンピースサラダと半ライスで」
「私はカルボナーラ?で」
中々に個性別れる物を注文した
「はやと、流石に貧乏精神過ぎるよ…」
「これからおごらされるのだから節約しないと不味いの」
ため息をつく。
それから数分後に紫苑のカルボナーラ
俺の色々(略)が届いた。
先に食べていた紫苑は美味しそうにかつ綺麗に食べきった。
「あのなぁ…少しは遠慮しろ」
「もらえるものはきっちりもらうのが私だから」
「…」
ため息一つ
こいつのせいで今日はよくため息が出る
何故か俺は疲れきった




「女苑元気かなぁ…」
「確かに…」
課題消費中。紫苑の妹の話だった。
依神女苑。紫苑の妹の名前だ。
夜逃げされた際に親戚に引き取られたらしく、生き別れの状態である
俺も一応顔馴染みだ。昔よく遊んでいた。
「…今頃何してるのかな」
「私にもわからないや…」
俺達は他愛もなく会話を続ける。
次の日の帰り、あんなことがあるとしらずに

俺達はその日バイトもなく買い物をして帰っていた。
問題はその時に起きた。
道の奥で女子中学生のグループがしゃべっている。
その中に校則大丈夫かってくらい奇抜で派手な姿をした少女がいた
一目見て、それが女苑だとわかった
「あ?」
女苑がこちらを見る
「「あ」」
こちらも目があった。
沈黙が広がる。
…感動の再開だが。とにかく気まずかった。


※ ※ ※ ※ ※


「あー…元気だったか?」
「ま、まあ一応ね…」
女苑は友達と別れたあと、俺たちについてきてくれた。
俺達は女苑をできるだけ歓迎した...といえどもてなしなど何もできなかったが。
俺はせめてものオレンジジュースを出す。
「...まぁ、久々にみんなで会えたんだし、乾杯しない?」
「「...そうだね(そうね)」」
俺が苦笑しつついうと、二人は快く承諾してくれた。
「...それじゃ、乾杯」
俺がグラスを前に出すと、二人はそれにグラスをぶつけた・
それから、お互いの近況を報告しあった。
女苑もなんだかんだ元気にやっていたようだ。
親戚にあずかられてから、俺たちとは真逆の裕福な生活をしていたらしい。
紫苑はめちゃくちゃ羨ましがっていたが、俺はそうでもなかった。
俺自身、この生活を気に入っているからだ。
ぼちぼちなこの生活ほど、幸せなものはない。
そんな風に雑談してると、女苑が言った。
「そういえば、二人は付き合ってないのかしら?」
「「は?」」
一瞬、場の空気が凍った。
俺と紫苑はお互いの顔を見合わせ、
「「ないない」」
当たり前の答えを返した。
「そもそも...あくまで協力関係?みたいなやつだから」
「そうそう、私とはやとが付き合うことはないよ」
「...そう」
三人で苦笑しながら、その場は終わった。
PM11。俺は女苑をバイクに乗せて国道を走っていた。
さすがに時間が時間なので中学生を一人で返すわけにはいかなかった。
バイクを走らせてる中、女苑は言う。
「...ねぇはやと、姉さんのことよろしくね」
「...ああ」
俺は静かに同意した。




...2月13日、私はあるものが目に入った。
バイト先に向かう途中、ある菓子店にて、チョコが売られていた。
私はそのチョコをガラスケース越しに見つめる。
バレンタイン...もうそんな時期だったか。
ふと思い返す。
...安いのでもいいから、たまにはチョコ送ってもいいかな。
そう微笑み、私はバイト先に向かった。


※ ※ ※ ※ ※


2月14日。バイトが終わる。
時刻は10時、そこら辺のスーパーは締まっている。
私は公衆電話で家に電話をかける
『はいはい?』
「あ、はやと...今バイト終わった」
『そっか。じゃあ迎えに行く?』
「いや...いいや。今日は少し買い物して帰るね」
『...わかった』
ぶつん、と電話を切る
私はすぐにコンビニに向かい、板チョコを適当に買う。
これだけで、友チョコとでも言っておけばいいだろう。
...というのは、私のテレカクシなんだろうが。
私は横断歩道を渡る。
その時の話だった。
...横から突っ込んできた車に、私ははねられた




「...!」
電話を聞いて、俺はすぐにバイクを走らせた。
紫苑が、車にはねられた。
今は病院に運ばれて、意識もあるということ、
だが...
『記憶喪失?』
『はい...本人が、「何も思い出せない」といってまして...』
事故のショックで、記憶が飛んでしまったと説明を受けた。
病院について、紫苑の病室に行く。
扉を開けると、そこにはベッドから上半身を起こしている紫苑の姿があった。
頭には包帯が巻かれており、目が半分隠れていた。
「...誰?」
「...神風はやと」
「...本当に誰?」
わかりきっていたことだが、少し胸が痛む。
それから俺は、いくつか質問をした。
どうやら紫苑は生きていくために必要な情報は覚えていた。
無くしているのは自分の過去や交友関係。要はそこまで重要じゃない記憶が飛んでいるらしい。
30分程度話して、病室から俺は出る
看護師からいろいろこれからの方針を聞いた。
どこにも身寄りがないなら、児童相談所に引きとられ、そこで新しい名前をもらう...とかなんとか。
カウンセリング等で記憶を取り戻すこともできるらしいが、
...俺はあちらにすべて任せた。
なぜなら、そのほうが彼女にとって幸せだと思ったから。
今のぼちぼちな生活を送るより、そのほうが、よっぽどいいと思ったから。
俺は...心にモヤモヤを抱えたまま、病院を出た。


※ ※ ※ ※ ※


俺は1人、公園のベンチに座っていた。
時刻はAM01。誰もいない公園にはただ静けさが広がっていた。
...なぜかひどく寂しく感じる。
いつもなら紫苑と馬鹿みたいに話していたが、今じゃそれもかなわない。
俺は溜息をつく。
孤独はここまでつらいものだったのか。
苦しい。
悲しい。
そんな風に考えて居ると、俺の考えはある方向にたどり着いた。
...あれ??なんで俺はこんな風に思っているんだ?
こんな感情は生きているうちに味わったことがない。
あいつが隣にいないと、胸が締め付けられる。
なぜだろう。俺は答えを探し続けた。
そして...
「...ッ...」
気づいた。
「...うぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」
俺は叫び、後悔した。
俺はずっと、紫苑が好きだったのだ。
だがもうこの気持ちを伝えることはない。
なぜなら、俺は判断を間違えてしまったのだから...




学校にて、俺はいつも通り席に座る。
紫苑も、俺の隣に座った、
紫苑が記憶を失い半年がたった。
クラス替えとかいろいろあったが、それでも俺の隣は紫苑だった。
...だが、もう彼女は紫苑ではない、
「蒼井さん?ちょっといい?」
「ん?なに?」
七色蒼井。それが彼女の新しい名前だった。
あれから、彼女はクラスの女子グループの中で楽しそうに話している。
...見ていて毎日悲しくなった。
俺はあるノートを取り出し、書き込んでいく。
紫苑が記憶を失ったあの日から、たまに書いている日記だった。
いろいろそこに書いていると、
「なに書いてるの?」
「おわっ...びっくりした」
いつの間にか蒼井が目の前にいて、俺のノートをのぞいていた。
「...この日記に出てくる紫苑って人、誰?」
「...お前は知らなくていい」
日記をパラパラと覗いていたから取り上げて、俺は席を外した。
彼女といると、胸が締め付けられるから_______


※ ※ ※ ※ ※


家に帰って、次のバイトの準備。
「ただいま...」
といっても、誰の声も帰ってこない。
俺は箪笥の上に置いておいた紫苑との2ショットの写真を見る。
中学生のころ、二人で若気の至りというやつで二人で撮ったものだ。
今はこれを見て、ひとりさみしく生きている
後悔したってなにも変わらない。
俺はそう自分に言い聞かせた。
そして、家を出た。
悲しい気持ちは、いずれ消えていく。
なら、ないのと一緒だろう。
バイクにまたがり、エンジンをつけて、道路に出た。
その瞬間。
俺は...トラックにはねられた




最近、よく昔の夢を見る。
私が何も知らない、昔の頃の話。
同い年の男の子と川で遊んでたら流されちゃって、
苦しかった。
でも、あの時、”彼”が助けてくれた。
私の大切な、同い年のあの人。
でも、今の私には思い出すこともできない。
私は昔の記憶がないんだから。
わたしが一人帰路をたどっていると、近くから鈍い音がする。
音の方向に向かうと、誰かがトラックにはねられていた。
「えっ...はやとくん!?」
わたしは彼のそばに駆け寄り介抱する。
彼がおぼろげな意識の中ひねり出した一言が
「...紫...苑」
「えっ...」
彼のノートに書かれていた「紫苑」という名前だった。
わたしがそれについて聞き返す間もなく、彼の意識は途絶えた。


※ ※ ※ ※ ※


次に目が覚めたのは病院だった。
右足と左腕が動かせない。この二つの骨はぽっくり折れたと考えるのが妥当だろう。
体をゆっくりと起こす。
「...ツ...」
まだ痛いが起きないと何も始まらない。
そうして起き上がると
「あ...はやとくん」
そこにいたのは紫苑...ではなく蒼井だった。
「蒼井...」
「...トラックにはねられてるのをたまたま見かけて...それで...」
軽く彼女から話を聞いた。
どうやら帰路をたどっている途中で俺の現場を見て、ここまでついてきたらしい。
俺は軽い溜息をつく。
すると、蒼井から質問された。
「ねぇ...紫苑って人、本当に誰なの?」
「...」
まるで自分の黒歴史をみんなの前で暴露されるような嫌悪感を感じた。
「...何度も言うけど、お前が知る必要はないんだよ」
「...じゃあ、私を紫苑って呼んだのはなんで?」
「..........」
おぼろげな意識の中、俺が見つけた彼女に放った一言。
あれだけは鮮明に覚えている。
「...ねぇ、答えてよ。あのノートに書かれている紫苑って誰なの?私の本当の名前はなんなの?」
どうする。ここでおとなしく答えても記憶が戻るかどうかなんてわからない。
もし記憶が戻ったとしてもまたあの貧しい生活に戻るだけだ。
そんなの...可哀想すぎる。
俺は...どうしたらいい。
俺は...俺は...
考えて、考えて、悩んだ末に...
俺は、その言葉をひねり出した。


((都合上分岐Aルートしか出せませんでした(泣)


「...なんども言わせんなよ。お前が知る必要はない」
俺は、いうことができなかった。
臆病だから、真実を教えるのを恐れたから。
「...」
二人には気まずい沈黙が広がった。
それから会話が弾むわけなく、蒼井は帰っていった。
そして...10年がたった。
高校、大学と卒業して。
俺は、普通に働いていた。


※ ※ ※ ※ ※


高校三年の時にできた友人から同窓会に誘われた。
そして、同窓会に行ってきた。
もちろん。蒼井も参加していた。
俺は...いろいろ会話を盗み聞きした。
彼女は...結婚して、今では普通の生活をしているのだと。
そういう風な話を聞いた。
...俺は少し安心する。
彼女は普通に生きて、幸せを手にしたのだ。
俺は...たださみしい人生を謳歌してるだけだが。
それでも、あの時の判断は間違っていなかったのだと、自分に言い聞かせることができた。
[...ということで、彼女も幸せを手にしたことだしこの日記も終わらせようと思う。
蒼井...いや紫苑。依神紫苑。
君が幸せになることを俺は、心から願っていた。
だから、最後にこんな言葉を贈ろうと思う。
君の幸せがこれからも長く続きますようにと願う言葉を。]
俺はそこでノートを描くのをやめて、深呼吸する。
そしてコーヒーを一口飲み、思考を回す
紫苑。俺は君が大好きだった。だからこそあの日、自分に嘘をついてまで、君に真実を教えなかった。
俺はそのせいで孤独になったけど、後悔はしていないよ。
君が幸せを手にしたのだから。
だから最後に、俺からの、届くことのないプレゼントを。
そうして、ノートに書きこんだ


[...君の幸せに花束を贈る]
俺は、ノートを閉じた

sirogane0730


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やっぱり見返してみると神だぁ…

アゲハ🦋🌺@ペテ神(初心者)#クソゲー愛好家
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