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『さよなら、』

突然、無名街が襲われた。

今日はスモーキーは倒れていた。
だから俺がスモーキーの代わりに指揮を…！
そんなときにスモーキーが呼んでいると連絡を受け今はスモーキーと二人っきりだ。

「相手をバラけさせ一人ひとり戦わさせろ。」

スモーキーからの命令。
いつもなら素直に分かったって言っているはずなのに今は気が動転しているのと自分の意見の食い違いで反論する。

「違う。バラけたりなんかしたら被害が大きくなる。纏めよう。これが最善だ。」

いつもより口調がキツくなっているのが分かる。

「焦るな。仮にも俺達はRUDEだ。相手が手を出す前に防ぐことが出来る。その為にいつも並々ならない筋トレしてるんだ。タケシが言うように相手を集めてもどうせまた散るだけだ。」

俺達の状況の何が分かるんだよ。寝たきりで何もできない癖に。

思わず浮かんだ言葉。必死に飲み込んで部屋を出て皆に指示を出す。

もちろんスモーキーの案を無視。

そう、これが正解。合ってるんだ。

そう信じて疑わなかった。

結果は予想外だった。
スモーキーの言う通り集めたところで何度も子供の様に四方八方に散る。

どうして、どうして上手くいかないっ！？

街も自分も何もかもが壊れていく音がした。

なんとか収まったがあれから数日もたった今でも何もする気が起きなくてベッドの上でうずくまり、部屋から一切出ることが無くなった。

自分の勝手な行動で家族が何人も消えた。RUDEの皆は大丈夫とか言ってくれるけど心の底ではどうせ…、と思っていた。スモーキーはあれから見ていない。生きているのか死んでいるのかすら知らない。

右手首を見ると無数の傷があちこちの方向に付いている。血が固まって赤黒くなっていたりもしている。ベッドサイドには血だらけになったカッター。
それを横目でちらりと見るだけでどうして生きてるんだろう。何度も何度も感じる。自分で泣きながら首を両手で掴んで絞めたりもした。痕が付く程度で死にはしない。人間は本能的に自分で自分を守るのだ。決定的な苦しみはまだ受けていない。それなら紐で吊ればいい。そう思うかもしれない。それでもなかなか踏み込む事ができないのだ。俺は強く生きてきたつもりだったのに酷く弱い人間だと思い知らされた。
カッターに手を伸ばし、右手を切ろうと力を入れたらカッターを持っている腕を掴まれた。

邪魔するのは誰…？

顔を上げても俺達と同じくボロい格好。頭と口らへんには布が掛かっており顔が見えない。知らないうちにまた新しく増えた家族だろうか。止められる筋合いは無いと思うんだけど。

「……なんだ。」

「来い。」

短く放たれた声。掴んだまま俺の身体を引っ張って部屋から連れ出した。久しぶりの外の世界。変わった気もしなくもない。そんな世界を割るように俺達二人は一直線に駆けてゆく。

その男は外の影に隠しておいていたのか黄色いスポーツカーが見えた。そこに半ば無理矢理乗せられた。

「……お前、なんだ。」

いぶかしげな顔で静かな声で訪ねたらはぁ、とため息を付きつつ布を剥いで髪をかきあげ帽子を被り、服を脱いだら下に何か着ていたらしく白黒のダボダボパーカーが現れた。俺はこいつを知っている。

「……マイティー…」

下りようと扉を開けても壁で遮られて下りれない。
下を向いていたら顎を上げられて無理矢理目を合わせさせられた。

「……変わったな、お前、」

「…裕福な生活しかしてないお前が何がわかる？」

「は？んなわけねーだろ。俺だってちゃんと苦労してるわ。」

興味のない事を言われてもやっぱり興味を持てない。適当にあっそって返した。

「無気力。目に光がない。」

呟くバーニー。鼻をくっつくくらいに顔を近付けてニィッと笑った。

「俺が取り戻してやる。過去のタケシを。」

「………あっそ、」

とりあえずこの街から離れたくて普通の男なら落ちるであろう台詞をかます。

「おれ、お前のこと好きになってもいいか…？」

「っ！当たり前に決まってんだろ。寧ろ好きになれ。」

この街、この街の人々、今までの自分にさよならを心の中で告げた。