|ハロウィン
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Best : 4 , Updated: Nov 18, 2024, 8:51:29 AM
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――あれって、藍井じゃないか?
いつもの塾からの帰り道、ぐだぁと肩を下ろしながらふと目線を前の方にやると、同じクラスの藍井優也の姿が見えた。
成績優秀、容姿端麗、おまけに運動神経も良く、いつもニヒルな笑みを浮かべている食えないやつだ。
あいつが消えていった路地裏を覗いてみると、小屋が立っていた。
なんだこの小屋、そう思って近づこうとするが、その足は良く知った声によって止められてしまった。
「何してるんだい?」
呆れたような顔でそう言いながら、道に積み重なっていたガラクタを容赦なく片した藍井は俺に向かって一言。
「ようこそ、僕の隠れ家へ。夏川海斗くん、待ってたよ」
そこにはいつものニヒルな笑みはどこにもなく、見たことないような笑顔が咲いていた。
「…お邪魔します」
「さあさあ、リュックはそこへ掛けると良いよ」
「……なにこれ」
「ん?見ての通り、棒で作った簡易つっかけ棒だよ」
いつもの清楚ぶりはどこへやら、小屋の中はガラクタでいっぱいだった。
こうやって見ると藍井は、秘密基地を作った小学四年生くらいの少年みたいだ。
「…さて、君にはこの小屋を知られてしまったわけだが」
「不可抗力でな」
「君はいつもの毎日に退屈を感じないかい?」
「は?」
何を言っているのだろう。生憎俺も高校生なので、厨ニとはおさらばした年齢だと思っていたんだがな。
まさか高校生になってまで、しかもこんな優等生が裏では厨二病患者だったなんて。
いつもの取り巻きの女の子らに見せてやりたいくらいだ。多分卒倒案件だと思うから。
「僕が変えてみせよう。その平凡で、なんの変哲もなくなってしまった日常をさ」
そして藍井は、自信満々な口元も、ほころぶような目元も、何も隠さずに言った。
にやり、頬杖をつきながらこいつはどうせ絵になるように笑うんだ。
「……ウソだろ、そんなん」
そう口は言いながらも、俺の心臓はどくどくと血液が遡ったかのように興奮していた。
まさかこんな歳になってまで冒険心はあったとは。
「ウソじゃないさ、僕は約束は守るよ」
「ふぅん」
「そこは興味持ってくれるかな」
「…ところで君は、魔法使いがいると信じるかい?」
先程まで自信満々なことをほざいていた藍井が急に俺にそう聞いてきた。
「なんだよいきなり、素をさらけ出しすぎて頭でも壊れたか?」
「そんなワケないだろう、僕はいつだって正常さ」
「"いつも異常"の間違いだろ」
「失敬な」
むすり。そう眉を潜ませながら僕をじとりと見てくる。
「僕はずっと、僕を救った魔法使いを探してるんだ」
そんなのウソだ、そう言おうとしたがいつもニヒルな笑みを浮かべているこいつがこんな顔をするなんて。
喉から出そうになった反論も、いつの間にか飲み込んでいた。
「ところで海斗くん。これが僕が怪しいと睨んでいる人リストなんだけれども」
そう言いながら乱雑にノートをぎしりときしむ机の上に置く藍井。
ぺらりと簡単にめくってみると予想外の人物の名前がいて、「え」とつい驚いて声を出してしまった。
「糸無も怪しいのか?」
糸無遊飛、それは一週間か前に編入してきた女の子だ。
可憐で、おっちょこちょいで、フレンドリー。おまけに成績も優秀。女版藍井(性格はもちろん藍井似ではなく優しい)みたいなやつだ。
そんな男子の理想の女子像を持っている糸無がなんで怪しいと思うのかは、俺には理解出来なかった。それに藍井はあまり彼女と親しくない。
「怪しいよ、彼女はとても怪しい」
そう藍井が絶対だと言わんばかりに見つめてきても、糸無が魔法使いってのは想像できなかった。
そしてそうこうしている内にも時間は経っていくもので、あっという間にハロウィンの二日前になってしまった。
「やっぱり…彼女は怪しい」
いつもの小屋で本を読んでいると、ふいに藍井が声を上げた。うぬん、と眉間にしわを寄せながら。
「何だよそのアホ面。いつもの清楚さはどこに行ったんだ」
「だって彼女はとても怪しいんだよ海斗くん」
「だから糸無のどこが怪しいんだよ」
「全てだ」
「は?」
「全てが怪しいんだよ。彼女のあのキャラクター像は裏では綿密に練られているに違いない」
絶対暴いてやるよ、その仮面を。
そう言い、不気味な笑いを零しながら紅茶を優雅に飲む藍井は、俺が見てきたあいつの中で一番怖かった。
まあ人間、窮地に立ったらみんなこんなんなんだろうけどね。
そう思いながら俺はずぞ、と紅茶を唆った。
「あつっ」
10月31日、今日は待ちに待たれたハロウィンである。
「やあ海斗くん、憂鬱そうだね」
「お前は元気そうだよな」
そりゃあ勿論、だってもう僕は既に魔法使いに会っているからね。
「は?」
「んふ」
目を開いた俺とは対象に、目を細めて口元を緩めながら笑う藍井。
こいつ今なんて言った?
確かに もう魔法使いに会っている と言った。
「いつ会ったんだよお前」
「今」
「は?どこにいんだよ」
「目の前に」
今、目の前にいるのは俺だけである。
俺以外に誰か見えているんじゃないかときょろきょろと周りを見渡す俺に限界が来たのか、藍井が大きな声で笑い始める。
「だから君だよ、僕がずっとお礼を言いたかった魔法使いはね。君は忘れているだろうけど」
「いや、俺はお前と会ったことないって」
「覚えてないかい?総合病院で見知らぬ子に手術を勧めたのを」
「……あるかも」
「だろ、ちなみにあの少年が僕だ」
どうしても、君に思い出させたくてウソまで吐いてたのにさ。
「じゃあ魔法使いの話は?」
「それもウソだね、10月31日ってのをうまく利用するため」
「なんで10月31日なんだよ」
「10月31日は藍井優也が、夏川海斗に命を救われた日ってことさ」
「にしては大仕掛けすぎるだろ…」
疲れたような顔で俺はきしみ続けているソファにどさりと被さる。
「さ、そろそろ24時になってしまうよ。親御さんへの言い訳はあるのかい?」
「藍井と勉強してるって言ってるから大丈夫だよ、多分」
「んふ、じゃあばいばい」
「おう、またな」
またな、か。
ネオンの光を浴びながら、彼の姿が見えなくなると同時に僕の体は薄く消えかかっていた。
「タイムリミットは今日までだったんだよ、夏川海斗くん」
君とはもうばいばいだね。
10月31日、魔法使いの里から久しく消えていた優秀な人材が戻ってきたそう。
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夏川海斗(なつかわかいと)…
運動神経にはかなりの自信がある高校二年生。
今回藍井の恩返しに巻き込まれた人物。
藍井優也(あおいゆうや)…
容姿端麗、頭脳明晰な高校二年生。
実は■■■■である。
糸無遊飛(いとなしゆうひ)…
ただただ巻き込まれただけの転校生。
すごいかわいいって信じてる。
小説めちゃ面白いですね!!最初はこうだと思ったら最終的にはこうで最後めっちゃ切ないみたいな(は)
すんません感想を言うのは下手くそなんですわ…w
てかまず、どやさんの文章の書き方好き!!
そしてキョンシーちゃん(くんかも)すっごいかわいい。輪郭をはっきり描いてない描き方綺麗すぎて尊敬です……
色の塗り方も綺麗だし…やっべ綺麗しかいってねえ…
とりますこです(結論)その才能を分けて下さい((
長文コメ失礼しました!!
尤莉
Oct 31, 2023, 5:21:14 PM Flag Link
|ゆうううううううりさあん
小説めちゃ面白いですか!!ありがとうございます🙏🏻
へっへへちょっとどんでん返しみたいにしたんだけど何かおかしくなったんだよな🙄文章の描き方は夢小説で勉強を重ねた結果です ( ん )
キョンシーちゃんくんはもう性別決めてませんキョンシーがただただ描きたかっただけっていう😊うへへ実はこれレイヤー二枚なんだよな...🫰🏻
やったあ綺麗なんですねありがとうございます🥲とりま感謝感謝ってやつですね結論は!!!!💃🏻私絵を描くIQ1なんでこれ以上なくなっちゃうと困るんで...!!!ゆうりさんの下さい🫵🏻🫵🏻
長いの好きなんで長いのどうぞ ( 長リプのすゝめ )
どや
Nov 2, 2023, 4:51:35 AM Flag Link
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