ライトブルーに沈む【創作短編】

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要するに、
オトナから好かれて、
コドモから嫌われる。

「カナタ君、ほんっとに可愛いわねぇ」
「おばさん、ありがとう！でも僕、男だよ？」

オトナの機嫌をとるのはお手の物。
みんなみんな、僕のことを「可愛い」だなんて言う。

嫌だなんて思わない。だって、オトナが気にかけてくれれば、この世界を生き残ることが出来る。

この、"僕達"が裁かれるべき存在だと思われている、この世界を。

「男なのに、ばっかみてえ。いっつもいっつも大人の機嫌を取りやがって」
「酷いなぁ、君達より、僕の方が優れているから、大人達から僕に話しかけてくるんだよ？僕は何も悪くないじゃないかぁ」

コドモを怒らせるのもお手の物。
みんなみんな、僕のことを「嫌って」いる。

嫌だなんて思わない。だって、コドモから嫌われていたとしても、この世界を力で示した時優勢になるのは僕だから。

普通とは違う、この僕が。

「いっつも笑ってて、疲れないの？」
「疲れない？何を言っているんだ。僕は笑いたくて笑ってるんだから！」

「嘘ばっかり。小湊君の笑顔、不自然だもん」

この人は、どれにも当てはまらないと思った。
自由気ままで、コドモみたいなのに、
オトナとはまた違い、僕に踏み込んでこない。

必然か、それとも偶然か。

「…ばぁーか、気がついてんならなんで近寄ってきたんだよ。クソ女」

「そーゆー人、大体面白いから」

僕は、初めて"ヒト"を好きになった。

「モノ好きなヤツ」
「よく言われる」

それが恋愛対象だったのか、
それともヒトとしてだったのか、
それは今でもわからないし、正直どうでもいい。

ただ、彼女が僕の中に住み着いたことは確かだった。

「なんで小湊君はひとりぼっちなの？友達いないの？」
「いるように見える？」
「見えない！」

言葉のナイフ
なんて言うけれども、彼女の言葉は正にソレだ。
別に気にしはしない。だけど、少しばかりカチンとくるのはなぜだろうか。

他の奴らに何て言われようと、どうも思わないのに。

「特別だからじゃないの？」
「…ンなわけないでしょ、ロゼさん」

第一、僕と彼女は違う。
彼女から、僕らの匂いはしない。
穢らわしい匂いは。

「あんた、まだまだコドモだねぇ」
「…オトナなつもりなんですけど。これでも」

そう言うと、ロゼさんは少し笑って、
「そう言ってるうちは、まだまだコドモだよ」
なんて言った。

その通りかもな、なんて、そのとき初めて自分のことを考え直したりもした。

「カナタ」

彼女に出会って、一年が過ぎた。
楽しいこともあった。
いや、楽しいことしかなかった。

彼女と過ごした時間は、今まで生きてきた中で、いちばん輝いているように思える。

あんなに笑ったのも、
こんなに本性をさらけだせるのも、

全部、全部、彼女__佐久間セイナの前だけだった。

「どうした、佐久間」

「…いや、私たちさー、友達いない同盟組んだりとかほんっとくだらないことばっかやってたよね」

「そうだな。ぼっちざまぁとか言ってたしな、お互い様なのに」

「そうだよね」

屈託のない笑顔。

これだ、これなんだ。
この笑顔を見ることが出来れば、それでいい、なんて思えるようになったんだ。

初めて、自分の中に「特別」の言葉を認めることができた。

認めざるおえなかった。

好きだったから。佐久間セイナという人間が。

「＿＿__楽しかったよ」

だったんだ。
あの時までは。

「…さく…ま」
「知ってる？」

腹を突き刺すものは、見なくてもわかる。
ナイフだ。
ぐっ、と奥へ奥へ進もうとするそれを手にしているのは、誰だ。

これは佐久間じゃない佐久間はこんなやつじゃないこんな風に醜く笑わないこんな風に人を汚すやつじゃないあいつは笑顔の似合う純粋な＿

「あんたらは、人よりもずぅーーーーーーーーっと脆いってこと！！！！！」

結局、騙されていたみたいだ。

▼.更新予定…