本丸№273 初期刀による手記

刀剣乱舞 加州清光 男審神者
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最高ランク : 81 , 更新: 2016/09/06 9:47:10

刀剣乱舞物。男審神者。加州清光の若干キャラ崩壊。腐ではないがそう捉えられる描写若干有り。
大丈夫でしたら、お願いします↓↓



俺の所の審神者は変だ。別に顔を見せたって神隠しには遭わないのに顔に“審神者”って書いた布を貼ってるし(たまに其れが目になってたりするけれど)。
本当に大人なのか疑う程に背が低いし男か女かも解らない。
普通誰かが悪戯をすれば怒るようなもんだけれど俺の主は怒る所か笑い乍
「悪戯は程々にね?一期、粟田口が絡むと面倒なんだから」
と粟田口の誰かが悪戯の標的に成れば最後の一言を添えるだけであり、一切怒らない。主自身もその被害者に成ってるって言うのに。



そういえば昔、主が審神者に成ったばかりの頃俺の我儘で主の顔を見せて貰ったことがあった。それは綺麗なものだった、傷痕がなければ。その傷痕は幼少の頃火事で受けた重度の火傷を治す為にした皮膚移植によるものだと主自身が言っていた。家族は皆その火事で死んでしまったらしくそして父親が働いていたと言う時の政府に引き取られた(主によればその時15歳だったらしい)。
然しそれは結構昔の話らしいが今の主は俺と出会ってから1歳も歳を取っていない風にしか見えない。今度聞いてみたいなとは思ってるもののそのたいみんぐが見つからない。



主に聞いてみた。悪質な“呪い”の1つらしい。主の家に火を着けた犯人に掛けられた呪いであって、掛けた本人でしか解けないという。しかもその犯人、既に死亡している。即ち主に掛けられた呪いは一生涯解かれないと言うことだ。もし解かれたとしても解かれた途端に主は灰となって居なくなってしまうらしくそんな事を言う主の顔は寂しそうだった。
それから推測するに主はずっと俺達の元に居てくれるのだろう。

………今、政府の人間が今日の近侍に連れられ審神者部屋に向かっていった。態々此処にまで政府の人間が来るなんて余程の事があったのだろうか。先程俺の部屋の前を通っていった近侍が自室に籠っている俺を見つけ部屋に入ってきた。勿論の事、この日記をソイツは覗いてくる。暫くしてからソイツが唐突に口を開いた。
「主がねこの本丸を離れる事に成るかもしれないんだって」
何を莫迦げた事を。

(ここからは覚えている範囲での事を書く)

「僕が審神者部屋を出ていった後直ぐにね?政府の人が“他者にこの本丸を譲る気はありませんか?”って主に聞いてたんだ」
ソイツの──安定の言葉の後直ぐ、審神者部屋がある方面から怒鳴り声が聞こえてきた。安定から遅れて廊下を覗けば他の刀剣達もなんだなんだと審神者部屋の方を見ていた。その中の数名は部屋に向かって走り出していた。俺もその1人。
審神者部屋に近付けば近付く程怒鳴り声は段々と大きく聞こえて来るようになった。
「何度でも申し上げますぞ。私(わたくし)の本丸を他者に譲るなど問答不要!!!!」
一人称が未だ私(わたくし)な為まだ相手が政府の人間である。と言う認識をしている筈だ。
「この本丸は私の人生そのもの!!!!それを他者に譲るなんて事は出来ない!!!!」
「落ち着いて下さい、審神者殿。刀剣が集まってきてしまったではありませんか」
主の目の前に座っていた黒い背広を着た男が主を嗜める。
「言語道断!!!!貴方にどれだけ話しても意味がないらしい。俺から政府に出向いてやる。安定、準備」
「え!?あ、うん」
「さ、審神者!?」
主の言葉に慌てる安定と政府の人間。
顔に布を着けているのに主がどれだけ険しい顔をしているのかは安易に想像が着く。
「主、俺も連れて行ってくれ。俺はあんたの初期刀だよ。一番長く側に居たし、一番俺を愛してくれたでしょ?」
「……バーカ。なんで過去形なんだよ、これからも。だろ?」
俺と安定が行くと決まればざわついていた他の刀剣も“あの2人が着いていくならば”と何処か安心した様な面持ちになる。
「おい手前。政府まで連れてけ」
安定の素早い動きで準備が整った主は政府の人間の胸ぐらを掴めば布の上からも解る眼光で脅しに入った。まあ、結果は予想通りでギクシャクとしながら“い、行きますよ”と声をあげた。



時の政府の偉い人が居る部屋の前で政府の人間─役人は立ち止まり“此処で服や靴以外の装飾品を外して下さい。”そう言った。主は戸惑いながらも布を押さえていた紐をほどき始めた。安定は傷痕を見た瞬間は驚き固まっていたがその後は慣れたのか普段と変わらずに居た。
「上官。本丸№273の審神者殿と近侍の大和守安定様、初期刀の加州清光様をお連れしました」
扉が開かれた。その奥に待っていた人は逆行に照らされ顔が佳く見えなかった。
「佳く来てくれたね、本丸№273」
「早速本題に入らせて戴きたい。何故私があの本丸を他者に譲らなければ成らないのですか」
「お前は佳く働いた。今後の人生は平穏に暮らしたいだろう?」
声からして男か。男は靴を鳴らして主に近づいてくる。その顔に何処か覚えがあった。
「それが何年振りと会う息子に対しての言葉ですか、父様」
父様。その言葉が頭に響いた。この男が主の父親か。待て、主は“家族は皆死んだ”と言っていなかったか?
「はっはっはっ。それもそうだな茶ァでも出すか」
「別に結構です。それに貴方ならば私の人生に最終地点が無いことは知っているだろう?私に呪いを掛けた張本人様」
──主は幾つ俺らに嘘を吐いている?主に呪いを掛けた本人は死んだのではなかったのか?
「……と言うよりも醜くなったものだな。あの美しい顔は何処へ」
「この顔にした本人が言うものかそれは。……私が伝えたいことは伝えた。私の本丸は誰にも譲りはせん。喩え、貴方が直々に訪ねてきたとしても私はこの命を張り、私自身を守り抜く!!!!では、失礼した。安定、清光。行くよ」
何時もと変わらない声色で俺達の名前を呼ぶ。後ろの安定が部屋を出れば扉が閉まった。
「……清光。俺さ、父親が生きてたなんて政府の人が言う迄知らなかったんだ。けれどそれは清光を騙していた事に何ら変わりは無い。すまなかった、清光」
今すぐにでも泣き出しそうな顔をして俺に謝ってくる主。
「1つ聞きたい事あるんだけどさ、放火の犯人と父親って同一人物?」
小さく頷く主、目には既に涙を溜めていた。
「あー、清光が主を泣かしたぁ!!」
重たい空気を壊したのは黙って話を聞いていた安定だった。後に聞けばその時で既に殆どの事を知っていたらしい(安定が勝手に立てていた仮説が見事に当たった)。
「なっ、別に泣かしてなんか無いよ!!」
「安定、清光。良いの。勝手に泣いてんのは俺だから」
何が良いんだよ、意味解んない。けど主は俺が怒ってないことに気付いたのか俺と安定の手を取って“さっ、俺らの家に帰ろう!!”と満面の笑顔で言った。その笑顔は今でも忘れられない。



─何年振りとこの日記を手にしたんだろう。主が居なくなって早100年。主は結局呪いを掛けた張本人である父親が死んだと同時に主自身も灰となって消えた。
俺の部屋の押し入れの中には主が大切にしていた本や文具。そして“審神者”や“目”が書かれた布が入っている。主が死んだと解った政府は直ぐに新しい審神者をこの本丸に就かせた。佳く働いてくれてるとは思う。けれど、前の主を全て忘れろだなんて事は無理で審神者の前では皆覚えてない振りをしていても俺の部屋へと来て主の物を貸してくれと言う。其処まで独占欲が強い訳でも無いし拒否をすれば主が悲しむから。と自己満足で他の刀剣に貸し出している。

─きよみつ。

少し幼いけれど懐かしい声が聞こえた。

─きよみつ。あのね、おれ生まれかわるんだって。だからさ、むりにとは言わない。

嗚呼、消えないで。とうの昔に収まった涙が溢れてしまう。

─おれをさがして?きよみつ。

─そして……あいして?

そんなの当たり前だよ。主に何の恩返しもしてないんだから。

何処かで主が笑った気がした。
(今度こそ俺の手から出て行かないようにしなくちゃ。例え隠してしまっても)








【気が向いたら更新か改めて書く。】

始まりの村


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