【長兄松】演目名、「松野カラ松」【15話ネタバレ】
おそ松さん 小説 長兄松最高ランク : 97 , 更新:
15話を見たら書かずには居られなくなった長兄松小説。
BのLではないです。
ワンクッション。
ツークッション。
「カラ松」
いつものようにイタい格好をして出掛けようとしていたカラ松に、俺は声をかけた。
振り向くことはせず、「なんだおそ松」と言葉だけで答えた。
そんな態度に、少しイラッとした。
「お前、なんか隠してんじゃないの」
「……なんのことだ?」
ほんの、一瞬。
けれど俺は、その一瞬を見逃さなかった。
俺が言えば、カラ松は固まった。
それはつまり、図星と言うことだ。
「やっぱり隠してんだろ」
「だから何を、」
やっと振り向いたカラ松は、再度固まる。
その顔は、恐怖の色に染まっていた。
多分、今の俺は、相当険しい顔をしていたんだと思う。
それくらい、真剣だった。
「なあカラ松、共依存って知ってるか?」
「共依存……?」
「自分に自信が持てなくて、必要とされたくてたまらない。例えドブスでも性格悪くても、“相手が好きなら俺も好き”って、必要とされることが嬉しくて、依存する」
「そんなこともあるのか。怖いな」
ああ、こいつ、無自覚だ。
それが逆に、恐ろしい。
自分が共依存体質であることを、わかっていない。
「お前、自分に自信ないんだろ?」
「……そんなことはないさ」
尚も食い下がるカラ松に、俺は一層苛立った。
「出掛けてくる」そう告げて、その場から逃げようとするカラ松の腕を掴んだ。
驚いて振り返るカラ松に、俺は言った。
「俺は、お前が必要だ」
「……え……」
「チビ太ん時はあんなことしたけど、本当は、弟たちも皆、お前のこと必要としてる。世界中がお前の敵になろうとも、俺たちは、絶対に、味方だ」
必死だった。
これ以上イカれて欲しくない。これ以上、こんなカラ松を見たくない。
頼むから、依存するのは辞めてくれ。
俺たちにはお前が必要だ。
だって、俺たちは六つ子。俺はお前らで、お前らは俺。
6人で、1人だ。
誰か1人でも欠けたら、意味がない。
「ふっ。心配ご無用だぜ、兄さん」
“兄さん”
その呼び方に、違和感を感じた。
「俺は常に自信満々だ。兄さんも知っているだろう?」
「は……」
サングラスを掛けて、いつものようにカッコつけるカラ松。
ふざけんな。
俺は、本気で心配している。
こんなふざけた態度望んでいない。
「それに、もう遅いんだ」
「え」
出掛けてくる、と再度告げて、カラ松は引き戸を開けて外へと出て行った。
もう、遅い。
もう、手遅れ。
昔のカラ松には、もう2度と戻れない。
「そうか」
そうか、そうか。
じゃあもう、心配なんてしなければいい。
だって、もう遅い。
じゃあ俺は、見守り続けよう。
演目名、「松野カラ松」。
誰かに必要とされたくて生きる、孤独と静寂を愛するその男の末路を。
終わらない舞台に、もう少し。
もう少しだけ観客として、拍手を送っていよう。
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