【長兄松】終劇【15話ネタバレ】

おそ松さん 小説 長兄松
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最高ランク : 41 , 更新: 2016/01/21 8:05:27

おそ松さん小説。
モブ幼女出てきます。カラ松。
先日あげた長兄松小説の続きみたいなものです。
BのLではございません。

ワンクッション。










ツークッション。










あの時のおそ松兄さんは、相当怒っていた。

「カラ松」

そう俺を呼ぶ声が、いつもより低いトーンだったのは、誰の耳にも明らかだ。
オレは、それを知っていた。
5人で声をかけてきた時、最初声をかけたのはおそ松だったが、その後は一言も発さなかった。
ただ、黙っていた。
トド松の代弁を、ひたすら黙して聞いていた。
それが、恐ろしくて仕方なかった。
だから俺は、逃げたんだ。


この時間帯の公園は、人も疎だった。
花の精は、消えた。
オレを必要としてくれる唯一の存在だった彼女はもう、いない。
例え顔が崩壊していようが性根がねじ曲がっていようが、俺を必要としてくれたことに変わりはないのだ。

おそ松兄さんは言った。

「俺は、お前が必要だ」

そうか。
それはとても嬉しいことだ。
兄弟に必要とされることを、俺は一番望んでいた。
おそ松兄さんは、それを知っている。

「それに、もう遅いんだ」

俺がそう言った時のおそ松兄さんの表情は、今も忘れられない。
クリアに、蘇る。
絶望。それが、一番よく似合う表情だった。
兄貴にそんな顔をさせるなんて、俺も罪な男だな。


「おにいちゃん、どうかしたの?」
「うわっ」

ボーッと考え事をしていた俺は、その不意打ちに不覚にも驚いた。
それを見兼ねた女の子は、ごめんなさいと口にした。
どうやら俺に声をかけたのは、可愛らしいリトルガールだったようだ。

「どうかしたのかい、未来のカラ松ガール」
「からまつがーる?何それ」
「ふっ、こっちの話さ」
「……ふふふ。変なの!」

少女は、楽しそうに笑った。
その笑顔に癒され、俺もつい頬が緩んだ。
辺りは茜色を通り過ぎ紫に染まってゆく頃だと言うのに、少女は1人だった。

「お隣いいかしら」
「……ああ、勿論」

どこでそんな言葉を覚えてきたのか、社交的な言葉を口にした。
ベンチに座っていた俺は、少し横にずれる。
そこに、少女はちょこんと座る。
とても小さい体だった。


「あのね、おにいちゃん、かなしそうな顔してたから」
「悲しそう……?俺が?」
「うん」

悲しそう、か。
あながち、今の俺にはぴったりな言葉かもしれないな。
ふっ、と笑う。
いつもの格好つけた笑いではなく、自嘲気味の笑いだった。


「確かに、今の俺の心は曇天だ。だが安心しろ。明日には晴れるさ」
「……よくわからないわ」
「大人になればわかるだろう」
「そうだ。おにいちゃんには、これをあげる」

そっと、大事そうにポケットから取り出したそれ。
緑色の――四葉のクローバー。
初めて見たそれに、俺は目を見開いた。
この幼気な少女が、探したのか。よく見れば、爪には砂が入っていた。


「残念だが、それをもらうことはできない。リトルガールが必死で探した幸せを奪うなんて、クールじゃないだろ」
「いいの」

俺の言葉が耳に入っていないかのように、少女は即答した。


「おにいちゃんが幸せなら、私も幸せだから」

にこり。
幼気で、儚い笑顔。
それは、これまで見た何よりも美しかった。


「……ならば、いただこう」
「うん!」
「ここには、よく来るのか」
「何日かに1回くらいは、来るわ」
「そうか。因みに、親は?」
「お父さんは、いないの。お母さんは私のために、おそくまでお仕事」

だから私はひとりぼっち。
悲しげに、言った。


「俺はお前を1人にさせない」
「え?」
「俺は幸せだ。たった今、リトルガールに幸せをもらったからな。お前もそうだろう?」
「……うん!」

無邪気に、笑う。
その笑顔に、儚さは混じっていなかった。
その笑顔は、良い。
子供らしい笑顔だった。
その笑顔があれば、少女の幸せが絶えることはないだろう。


「おにいちゃん、またあおうね」
「ああ。会えるといいな」
「やくそく!」

そう言って、小指を差し出す。
小さな小さな手の、小さな小さな小指。
その手に俺は、幸せをもらった。
ゆびきりげんまん。少女が歌う。俺もそれに合わせて、小さく歌った。


「じゃあ、またね!」
「――ああ。またな」

暫し、少女と約束を交わした小指を眺めた。

必要とされた。
あの少女に、俺は。
必要とされることに、遅いも早いもないのかもしれない。

演目名、「松野カラ松」。
終劇の時は、近い。

凛久


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お絵かき〜
2018/01/05 9:23:59 凛久 3

30分くらいの雑な絵だけど楽しいからOK! でも受験生なんだよなぁ。 明日は...


首〜
2017/12/23 2:38:55 凛久 4

本当に性癖だから楽しいです。 受験生だがibisとYouTubeとFGOばっかやってます。



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