なんちゃってない人狼戦線 Epilogue

なんちゃってない人狼戦線 完結 小説
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更新: 2016/09/07 6:06:25

それからしばらくして安置所に向かうこととなった。俺はスタコラと蜜柑を抱きかかえながら、遺体が謎のポーズを取らされている悪趣味な安置室にたどり着く。たどり着いた段階で俺はベッドに彼女を寝かせる。そして、冷たい目を人狼の二人向ける。
友達を蹴落としてまで叶えるような、そんな大層な願いなんてあってたまるかね。ギリッとアルブムの方を軽く睨んでみれば、彼女はおずおずと口を開いた。

「私は生き返らせたかった。……だから、みんなを騙したんだよ。」

苦しそうな声で彼女はそう、答えた。

「私が何をやったかなんて重さは理解している。実際この手で殺しはしていないとはいえ、させた時点で罪でしょう?……それに、自分の保身のためだけに生きながらえた時もあった。……私が吊られそうになったあの日とかね。」
「アルブムちゃん……。」
「許せとは言わない。というか私達にいう権利なんてない、そうでしょう?」

クルッと振り返れば、アルブムが後ろに控えるように立っている佐川に尋ねる。彼はといえば、何も写してないような瞳のまま重い口を開きはじめた。

「そうだな、許してもらう権利なんざはじめから存在してない。そんなこと、睦月が死んだ段階で気づいていただろう。」

バッサリと言い切れば続きをいえ、とばかりにアルブムの方を佐川が見た。

「……うん、分かってたよ。ありがとう。まぁだから騙すだけ騙して最後の最後に罪滅ぼしで生き返らせようと思ったの。……ごめんなさい、ごめんなさい。」

パタンっと彼女は座り込めば、今まで保ってきた何かを捨てるようにボロボロと泣き崩れていく。もうやだ、もうやだと叫ぶように彼女は泣き叫び始めたのだ。被害者も辛いけれど、不本意でしてしまった加害者も加害者も辛いということだろうか。
とりあえず俺は彼女を宥めてあげて欲しいとエルメスに伝えて、佐川の方を見る。この様子だと、実行犯はこちらだろうからね。

「で、君には何か事情があるのかね?」
「ない。……しいて言えば殺していて楽しかった。それだけだな。」

フッと何かを隠すような薄ら笑いを彼は浮かべる。こいつ、この期に及んで隠すつもりか。

「君、ごまかしが聞くと思ってるね?お生憎様隠すのは俺のほうが上手なんでね。」
「……俺にそんなつもりがあると?」
「ああ、あるね。だって本当に楽しい時の顔は俺が1番知っている。」

まぁ流石にお姉さんとかギルの方が知ってそうだけどね、と苦笑いを浮かべた。すると彼はシュッとナイフを取り出して、こちら斬りかかってこようとした。ちょ、危ないんだけど。

「アンタに何がわかるというんだ。一枚のカードのために人を、見知った人を殺さねばならない気持ちが理解できるとでも?」
「殺さないって選択肢は無かったんだろうしねぇ。ま、なんにせよ俺は君の本心を聞きたいのだけどね。だって、君は殺すときに"一突き"ではなく"滅多刺し"にしたんだろう?この意味、実際に行った君ならわかると思うんだけど。」

相手をじっと見つめる。不安で偽ってるような相手には、これが1番効果的だからね。

「そうだな、決め打って出来ない程度には俺には罪悪感があるからな。……ああもうそうだよ、隠してたよ悪かったな。」
「――全く、辛いなら辛いっていい給えよ。担任が頼りないのもわかるけどねぇ……。」

なんだかんだで溜め込むなこの二人、と考える。すると俺の方をエルメスがポンポンと叩いて、場に似合わないくらい明るい笑みを浮かべながらこういった。

「先生は頼りないですよね!」

おいこら、笑顔でなんてことを言うのだね。とりあえずエルメスにデコピンすれば、表情が暗かったアルブムがクスっと笑った。

「ふふ、なんか元気出てきました……とりあえずフロントに戻りましょうか。確かそこで願いを叶えるって言ってましたよね。」
「嗚呼、願いをそこで聞くそうだからな……行くか。」

それだけ二人で話せば様子をうかがうように、こちらを二人が見た。はいはい、俺らも行くから一緒に行こうか。元凶の話も聞けそうだしね。






それからフロントにたどり着き、4人で椅子に腰掛ける。するとそれがスイッチだったのか急にスクリーンに見覚えのある狐面の人が映しだされた。今回の企画提案者、というか元凶だ。
そしてそれが目に入った瞬間イラッとしたのか、元々言いたかったのかアルブムが立ち上がって意見を述べる。

「何でこんな酷い事を私達にするのよ!私達が、私が殺した人たち全員が何かしたとでも言うの!?」
「嗚呼始めた理由を聞きたいのかい?いや、君達自体に悪いところがあるということではないよ。ただね、君達が美男美女なうえに学生だと面白いだろう?今までは大人ばっかりだからね遊ぶコマとして扱ったというわけ。」
「はっ……正気?」
「うん正気。……とは言えガチの殺し合いって感じが足りなかったのが些か残念だけど作品としては上々だったからさ。」

意アルブムに対して実にふざけた返答をすれば、それより狼さん達の願い事とは何かと付け加えた。どうやらオマケ感覚で叶えるつもりらしい。

「……じゃぁ、生き返らせてよ。全員!」
「えー作品手放すのいやなんだけど……ま、約束したのが悪いか。いいよ。」

相手は余程いやなようでため息をつくが、指をパチンッと鳴らす。それと同時に、地下から爆発音がしてこちらもグラっと揺れた。あそこの水槽が割れたのだろうか、スッと狐面を見れば若干落ち込んでいるように見える。余程嫌だったらしい。

「あぁコレクション……で、もう一人の方は?」
「彼らが島から出た瞬間この島での記憶の抹消してくれ、俺のは消さなくていい。」
「ほう、理由は?」

狐面が不思議そうに尋ねれば、どこからかあの処刑用の銃を佐川がこめかめに当てた。

「これだ、消す必要が無い。死体は煮るなり焼くなりしといてくれ。」

それだけ言えば自分に向けて発砲しようとするが、アルブムによって止められた。なにか物申すことがあるようで、おもいっきり睨みつけて待てと叫んだのだ。

「ちょっと一人で勝手に楽にならないでよ!」
「煩い、実質アンタは誰も殺してないだろう。記憶まで削除するんだから好きなだけ人生を謳歌すれば――」

佐川がキレ気味に言った瞬間、アルブムが思いっきり頬をぶっ叩く。目には涙が溢れんばかりに流れてるようで、エルメスが後ろで慌てているのが目に入った。

「確かに"殺し"はしてないわ。でも偽装工作っていう立派な共犯者であるのは確かで、それを私たちは法では裁かれないから生きて償っていくしかないの。わかる?」
「な……っ!?」

見んなとばかりにスクリーンの方を彼女が睨みつければ、願いだけは叶えときますプチンっと画面を切られた。君意外と小心者だね?

「ま、そんなわけだから皆に謝りに行こう……そんで事実を受け入れて生きていこう。」
「いやアンタは忘れるだろ?」
「どうせ盗み聞きしてるだろうから、人狼に指名した二人は消さなくていいと言っとけばいい。」

だから皆に謝りいこうと、彼女が遺体安置所歩き出したのは言うまでもない。






この島に救助班が来てからについて軽く付け加えるとしたら、殺された人たちが消されてるにもかかわらず、彼女らの他に俺とエルメスにもこの記憶は残ってるということだ。コレクションを結局保存できなことに対する腹いせなのか、はたまた指定ミスなのかはわからないけれどちょっとした思い出にはなったように思う。

嗚呼そういえば、地下2階に何やら開かない鍵の掛かった扉があったのだけれど一体何があったのだろうね。食べ物の保管庫?ゲームマスターのすんでる場所?はたまた――


そのゲームマスターによる遊びによって生まれた死体でも保管されているのだろうか、それは俺には分からないや。


END

もずくもち@のーたりん


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2016/11/26 11:04:55 もずくもち@のーたりん 2

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