白【原作:月鏡様】

月鏡 立野真 短編
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本当は、ずっと前から気がついていた。





「…小豆、好きだよ」


耳元で、そう囁かれた。
抱き締められたときに、ふと、知らない香水の匂いがした。女の人らしい、薔薇の香りが。

思えば、これが始まりだったんだっけ。

次の日も、また次の日も、
知らない匂いが君を包み込んでいて、
廊下で君に手を振っている女の人から、
同じ匂いが漂っている。


「(……綺麗だなぁ)」


その全員が、超がつくほどの美人で、
君ってすっごいもててたんだよなー、
って思い出して、また少し胸がチクリと痛んだ。
あの人達__蓮くんの浮気相手さん達に比べて、私は本当にすっぽんのようなものだ。浮気されて、当然なのかもしれない。


そうだ、選ばれたこと自体が奇跡なんだ。
私なんかが、蓮くんに「好きだよ」なんて言われること自体が、夢みたいなものなんだ。


だから、彼氏彼女なんて、そんなものは、もしかしたら私の幻想で、本当は「あっち」が現実、なのかもしれない。
そうだったら、楽なんだろう。














「……蓮くん」
「ごめん、ちょっと我慢できない」

唇に触れる感触は、私達の関係に現実味を帯びさせる。
蓮くんは時折、何かに縋るように私にキスを求める。その瞬間が、前まではすごく幸せだったのに、今ではすごく苦しくなる。

こんな綺麗な唇、私には相応しくない。

そうだ、この前見た__あの、色っぽい女の人。あの人とキス、してるの見たときに、私は悲しくならなかった。
ああ、やっぱりか、なんて。
そんな風に思ってしまって、すごく蓮くんに申し訳なくなった。

そんな風に思ってしまったなんて、なんだか私を「好き」だと言ってくれる蓮くんを裏切ったような気がして。


「……蓮くん、蓮くん」
「なんだ?小豆」


けど、けど。
もう嫌なんだよ。

本当は、ずっと前から気がついていた。
それでも、見て見ぬ振りをして、
今まで、彼氏彼女を続けてきた。


今日は、もう我慢がきかなくなったんだ。
堂々と廊下で抱き締めあってる、蓮くんと綺麗な女の人。
浮気だ、なんて騒がれていたけれど、そんなものはどうでもよくて。



ただ、悲しかった。



「…ごめんね、蓮くん」
「小豆、いきりどうし」

蓮くん、もう幸せになって良いんだよ。

「私達…別れ」

そこまで言って、口をぐっとつぐむ。




『俺、小豆のことが好きなんだ』
頬をほんのり赤く染めて、

『俺と、付き合ってくれないか!?』
ちょっとだけ声が裏返っていて、

『絶対、幸せにするから』
最後には、何よりも綺麗な笑顔を見せてくれた。



「…嬉しかったの」

好きって言ってくれたことも、
抱き締めてくれたことも、
キスしてくれたことも、


「全部…全部っ!」


大好きなの。
嫌いになんて、なれないの。
私だけの、蓮くんでいてほしいの。



「だからっ、もっとっ…!!

君と一緒にいたいと思っちゃうの……!!」



流れ落ちる雫にぼやけて、
少しだけ歪んだ君の顔は、


酷く、歪んでいるような気がした。



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立野 真


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‥……なんか………まこちゃん、あなた作家さんなのかい?
かいてくれてありがとうっ(´;ω;`)


月鏡R
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