リクエスト(消化&募集)

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最高ランク : 6 , 更新: 2015/11/04 7:20:47

彼がすきだった。
いや、すきだったと言うと過去形のように思うから、正確には「彼がすきだ」になるのかもしれない。

いつからすきになったのと聞かれれば中学1年のときくらいかなあなんて曖昧にしか返せないけれど、もうわたしは華の高校1年生なわけで、つまりはもう3年続く恋煩いなのか。

わたしの言う「すき」とは、もちろん恋愛感情としての異性に対する興味である。
しかしそれはひそやかな敬愛をもすべて内包したもので。

尊敬がないと恋愛は成り立たないと昔の偉人は言ったらしい、ほんとうにそう思う。いまでも彼をすきなのは、いまでも彼のバレーをする姿がかっこいいからだ。


❁


初めて見たのは、女バレに所属していた友人と、男バレの試合の応援に行った際。中体連のだったと思う。
彼女には男バレの中に気になる人がいたらしく、一人じゃ恥ずかしいからなどと、いつものさっぱりガッツリ姉御肌はどこへ消えたのやら可愛らしいこじつけと共に、ほぼ強制で連れ出された。
思えば、内向的だった私になにか別な空気を吸わせたかったんだろう。確かに彼女は愛らしくも世話焼きで頼れるお姉さんだった。

彼女の献身的な思惑とはうらはらに、わたしは審判が笛を吹く度に湧き上がる歓声をぼやっと聞いていた。試合会場の空気に流されるまま、特に誰に注目するでもなく、なんとなく試合を観戦していた。
自分たちの学校のためやはり千鳥山が勝つと嬉しかったけど、相手チームがスーパープレイを見せると、ふつうに凄いなあと思った。
周りを見れば悔しそうにさらに応援の声を強めていたから、わたしはどっちにもついていないんだろうなと感じながら。
おかしいのかな、とは思わなかった。バレーはあくまでテレビの向こう側、あったとしても頓着しない、あぁバレーやってるんだなあ、そんなものでしかなかったから。


「あ、西谷でてきた」

ぽつりと彼女がもらした西谷という名前は、たぶんいれ替わって入ってきた小さい選手のだろう。コートの中にひとりだけ、他のメンバーとは違うユニフォーム。
彼女の口調から察するに、彼はわたしたちとおなじ1年生だと思われた。
名をあげだしたらキリがないほどの生徒数を抱える千鳥山では、同級生全員の顔と名前を一致させるのは至難の業だし、更に物覚えの悪いわたしにはことさら「ああ、あのひと」などとはいうことは出来なかった。名前だけは微妙にさらっと聞き覚えがあるようなないような気もしなくはなかったけど。


ただ、眩しいなぁとおもった。


男バレは部員数が多くてレベルもそこそこスゴいのよと例の彼女から試合前に言われていたから、そんなハイレベルな争いのなか1年生で公式試合に出られるなんてすごく練習したんだろうなあと、尊敬した。その練習をモノにできるのだから、才能の手助けもあったんだろう。
ひゃあひゃあ内心で盛り上がると同時に、少しだけ西谷くんのことが羨ましかった。躊躇いがちな、一生懸命さへの嫉妬。口でいうと変な感じだ。
なにかに懸命に努力できるのが、何に対してでもなくねたましく思った。
部活熱心なひとはみんなかっこよく素敵に見えるというけれど、あぁそのとおりだなあと、ちかちかと瞬いては消える光の粒子に囲まれた彼を見遣った。

「かっこいいなぁ…」
「西谷が? あー、まあ、男らしいよね、チビだけど」

彼女はステンレスの手すりに頬杖をついて、悪態をつきながらも頬を緩めて楽しそうに言った。口と心情が裏をついてはたらく素直じゃない性格をしたひとだから、きっと認めてはいるんだろう。
ひとりだけ浮いたユニフォームがさらに西谷くんを際立たせる。
リベロのものだっけ、確か。
ボールを拾うのが仕事なんだから、そりゃあ機敏に動ける身長の小さなひとがリベロになるべきなんだろう。西谷くんはわたしよりも小さい?と思うくらいには小柄だったから、なるべくしてなったんだろうなあとおもった。


思ってしまっていた。



ふわりとボールが上がる。

相手チームのアタックで壁がひん曲がりそうなくらい勢いのついたそれを、西谷くんは、彼の手は、魔法みたいにゆるやかにしてセッターへ繋ぐ。

コマ撮りの写真を見るように、その一瞬はとても、とても長く、強く、わたしの目に焼き付いた。
描いた放射線がボールの残像で彩られる。
彼は、にっと得意げに、自慢げに、どうだと言わんばかりに口角をあげた。琥珀色の澄み切った双眼に、自信に満ちた光が宿る。

「……すご、きれい………」

彼の様子にか、それとも華麗なボールさばきにか、どちらとも言えずしかし前者の色が強いついこぼれた感嘆の声に、友人は呵呵と笑って、「好きになった?」とふざけた。

まさか。そんなわけではない。これは純粋で一途な敬愛の念であり、邪な劣情なんかじゃ、決してない。
事実その時は恋情は全く絡んでいなかった。
なぜだか一目惚れしたように彼に目を引きつけられてはいたが、1年生であることに驚いて見ていただけであり、桃色ピンクな思考は1ミリの介入も許さなかった。

でも。

「好き、だ、なぁ……。綺麗で、なめらかで、仕事人って感じして」

ちがうとかぶりをふったのに、それでも口をついて出たのは、彼女の言うとおりのことばで。
ちょっと悔しい気もしたけれど、穏やかとはかけ離れたところにある、きらめきを放つ不可解なそのきもちは、誰かを好くことにきっと似ていた。

つむいだ言葉には不可思議なちからがある。
好きだと言ってしまえば簡単で、それは、もう既に、恋であった。



「……ど、どきどきする」
「お、惚れたかァ?」
「ちがう、けど、そうかもしれない。そうだと思う」


❁


さて回想はここまでとして、西谷くんに押しかけるとしよう。
今日も体育館から威勢のいい声が聞こえてくる。委員の仕事も無事終えたし、練習風景を覗いてみるのもまた一興。
きっと彼は嬉しそうな顔をして、わたしの想いなど露知らず、「また来たのか!」と笑いかけてくれるんだろう。

今はそれだけで、充分幸せ。

❁*̩̩̥˚̩͙⚛*̩̩̥ ͙*̩̩̥˚❁*̩̩̥˚̩͙⚛*̩̩̥ ͙*̩̩̥˚❁*̩̩̥˚̩͙⚛*̩̩̥ ͙*̩̩̥˚❁

あるたんリクエストの「西谷くんに片想いする女の子」で…!
青城絡めませんでしたすみまそ(*´・ω・)…
でも絡んだらすごく長編になる予感がしたので、キャラクターが練れたら占ツクの方で書く……かも、しれない………(すごく楽しかった)


リクエストありがとうございました!消化したので(申し訳ないけどほんとうに申し訳ないけどがーるさん以外の方で、)もしあれば小説リクエスト先着一名様うけつけます~!

a


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》すいちゃん
ふぉおお二口!!!!伊達工!!おっけーです!
年齢とか学校とかは特に指定なしでいいのかな?なにかあればどうぞー!


a
2015/11/04 7:30:23 違反報告 リンク


ありがと〜っ!
女の子の気持ちすっごいわかる、一生懸命
なにかに取り組むひとって妬ましいとともに
尊敬するよね…・*・:≡( ε:)
あのレシーブみたら惚れる(確信)


がーる
2015/11/04 8:52:14 違反報告 リンク


》あるたん
なにかに打ち込めるっていうのが、その人でもその何かでもなくて、なんとなく羨ましいなあって思うんだけど、でもやっぱりすごいなあって尊敬しちゃうよね。
ノヤっさんの「かっこいいところ」は実はわたしがノヤっさんに惚れてるところだったりします〈:3 彡
レシーブしたときのあの顔とても男前でかっこいい………。

リクエストありがとうございました!


a
2015/11/04 17:22:22 違反報告 リンク


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2016/10/16 12:55:34 a 6

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トゥうぃッター
2016/09/03 23:50:24 a 4




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