EP1-05 試練と英雄
創作 第一章 大魔女試練編最高ランク : 13 , 更新:
あれからまた1週間が経ち。遂に運命の日がやってきた…
ずっと大事にしてきた魔女服を身に纏い、全身に宿る魔力の具合を確かめて、もうバッチリ準備はできた。
部屋を出て、外で待っている家族の元へ向かう。
「それじゃあ、いってきます!」
「いってらっしゃい!おねえさま!」
「気をつけて!」
にこやかに笑いかけてくれるのはお父様、お母様、ソールにアウロラ。ずっと私を支えてくれた大事な家族。
…そして、一番守ってあげたい、大事な存在なの。
大魔女になったら今までの恩を、返すことができる…
(今日は、私が’’大魔女’’になれるかどうかが懸かっている最終試験の日…)
私は奮起していた。叶えたい夢を本当にできるこれからのことを考えて。
(絶対に失敗はできないし、絶対に合格したい。…私の昔からの憧れ。ずっと努力して、大魔女になることを夢見てた。
そして、今日それが叶うかもしれない。なら私は、最後までできる限りのことをやるしかない!)
「精一杯、頑張ってくるわ!」
私は家族に笑いかけると、魔界のど真ん中にある会場へ赴いていった。
「お姉さま!がんばってねー!!」
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魔界のど真ん中、【堕】の地区。あまり行く機会がない場所。
そこに立ち並ぶ綺羅びやかな建物、その中に試験会場はあるわ。いつにも増してかなり賑わっているみたい。
最終試験では毎回、新しい大魔女の誕生を見ようと向上心のある見習い魔女や魔界の住民らがこぞって集まってくるけれど、今年は特に。
大魔女試練の詳細を知ろうと探りに来るのが目的の魔女もいるみたいだけれど、それはかなわないの。
「だって、毎年ここの魔術による情報流出の規制は厳重過ぎるものね…」
会場周辺に張られた「いかにも」な魔力ガードを見て、苦笑いが漏れてしまう。
そういえば、お母様は私に大魔女試練の内容について教えようとしてくれたけれど、お母様の受験内容と今の受験内容は少し変わっているらしいから、情報流出の規制に引っかからない…らしいわ。
どちらにせよ、試験内容を完璧に知る手段は無いということね。
(ふぅ、やっと中に入れたわ。えっと…成績順だから受験番号は1番…シャロとは近いかしら?
今日の最終試験には…60人残ったみたい。初めの方には、3000人はいたのにね。それほど難しかったってこと…)
そう考えながらも、目が自然にシャロを探し始めていた。
だって、今日ここにいるのは年上の魔女ばかり。仲の良いシャロと合流できれば少し安心できるでしょう?
辺りをぐるりと見回してみる。60人しかいないのだから、すぐに見つかるはずよね。
…なのに。
(あれ、シャロ…いない…?)
__突然賑わいが止んだ。
バンっ、と大きな音を鳴らし、部屋の中央の扉から立派な服を纏った女性が入ってくる。
その女性が誰なのか、扉の方を振り返ってみると…
「はい!受験者の皆様、こんにちは!本日の試験官のソリエルです!」
「えっ…!?」
にっと笑う試験官を見た受験生達によって、一気に会場がざわめく。無理もなかった。
「ちょっと!あの方、太陽の大魔女様じゃないの!?」
「間違いない、あの英雄大魔女ソリエル様じゃないか!」
「なんでそんな方がここに…!?」
「ど、どうしよう、一気に緊張してきちゃったよ…!」
「静粛に!!」
隣りにいたもうひとりの試験官の魔女が凛々しい声で怒鳴った。
「本日は特別に、士気の高いお前たちのために大魔女ソリエル様がわざわざここまでいらっしゃったのだぞ!もう少し大人しくせんか!!」
「ぽ、ポヴェル様までいらっしゃるなんて…」
(うーーん…いきなり大魔女様が現れて冷静でいられる方がおかしいと思うけど…)
「あは、でもポヴェルちゃん、そんなに怒鳴っちゃうとみんなが怖がっちゃうよー?」
「し、しかしソリエル様…」
(…ソリエル様は昔と変わらず、のんびりした性格のようね…)
朗らかに笑うソリエル様とおろおろしているポヴェルさんを見て、他の受験生たちはきょとんとしている。
(…まぁ、ソリエル様とポヴェルさんの関係を受験者の中で知ってるのは、おそらく私とシャロだけでしょうし。無理もないわね。)
でも、そのシャロがこの会場のどこにもいない…本当にどうしたのかしら。もうソリエル様達試験官も来てしまったのに、まだ姿が見えないなんて。
「さて!まずは最終試験の説明について行いましょう!ポヴェルちゃん、皆さんに資料を配布して!」
「は、はい!」
疑問を残したままの私を置いて、ソリエル様はにっこりとポヴェルさんに指示を出し始めた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「「「「」」」」
配られた資料を見て、私を含めた受験者全員が絶句。
端的に言うと、最終試験の内容がとんでもないの…
なんと、ただの筆記試験でも実践試験でもなく、
「大魔女様から与えられたランダムの試練をクリアする」、というのが大魔女になれる条件ですって。
それも、一人の大魔女様ではなく、三人の。
(あぁ…受験生の皆さん、皆同じことを考えてるんでしょうね…)
全員の顔から『いや何言ってんだアンタふざけてんのか?何かの冗談です?』という言葉が見える見える…
…大魔女直々の試練を乗り越える。これは非常に難しいことなの。そもそも、大魔女にはかなりの魔力量がないとなることができない。それは、現在の大魔女たちの所持魔力量が、以前より爆上がりしているから。
「近年は変わらずこの試験内容となっている!因みに私はこの最終試験で通算三度落ちた!」
(ポヴェルさん、堂々と言っているけど涙目…よ、よっぽど難しいんだ…)
現在は大魔女試練は一度しか受けられないけれど、少し前までは何度も受験可能だったらしいの。
なにか事情があって一度のみに変更されたらしいけれど、その理由は誰も知らず、謎に包まれているわ。
誰も知らないし、何より詮索できないようになっているしね。大魔女様達が隠していることだから、何か重大な問題があったのかしらね。
「はい、ということで!これから受験生の皆さんにはここではなくて、私、ポヴェルちゃんを含めた各大魔女のもとで試験を受けてきてもらいます!現在100名の大魔女から3名、こちらの方でランダムで決めておきました!それでは受験番号順にこれから、口頭で発表していきまーす!ポヴェルちゃんよろしく!」
「はい!えー、まずはー…」
(((((どうしようかなりハイペースだ!!)))))
受験者は全員、絶句しつつ混乱しているのに、お構いなしに試験の…それにシャロもいないし…あぁもう。少しくらい待ってくれても…
(でも、私は受験番号1番、初めだからちゃんと聞いておかないと…!)
「受験番号1番、ダイアナ・ティターナ。試練を与えるのは…大魔女レトナ・ティターナ様、ライノー・キルカ様、そしてソリエル・アストロカ様。2番、」
「んんんんんんん??」
「…なんだ、変な声を出して。なにか不備でもあったか?」
「あ、い、いいえ!すみません…」
ソリエル様が少しニヤニヤしながらこちらを見ている…もう、やっぱり!
(つい声が出ちゃったわ…いや、でもね、これは仕方ないと思うわよ?
私だって、この試験のために今まで努力してきたんだから、想定外のことが起こっても、至って冷静でいられるくらいの精神力もメンタルも持ち合わせているんだから。…けれど……!)
あまりにも試験官…主にソリエル様の都合に合わせられたような大魔女様の選別に、私はついシャロのことが頭から飛びそうになってしまった。
次回 第六話「VS脳筋大魔女」
(※次回第六話の記録更新は遅れます)
追記: 一部分かりづらい表現があったため、少し内容を修正しました。
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