EP1-06 VS脳筋大魔女

創作 第一章 大魔女試練編
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:119 hit

最高ランク : 17 , 更新:

✸前回までのあらすじ✸

魔法を操る「魔術師」、「魔女」らが存在する魔界。そんな世界で、魔女の憧れの存在、「大魔女」になることを、「月の魔女」ダイアナは親友で「魔の魔女」シャロと共に志していた。そして、二人は魔界に忍び寄る「異変」の存在に感づいてもいたのだった。
ある日、半年に一度行われる「大魔女試練」と呼ばれる大魔女になるための試験が実施され、二人は最終試験を受ける段階にまで進む。ダイアナは今まで支えてくれた家族のことを思いながら、張り切って最終試験の会場へ入場する。だが、そこにはシャロの姿が無く…
更に困惑する間もなく、ダイアナら受験生に告げられた最終試験の内容はとんでもないものなのだった…






受験生全員分の試験出題者が発表され、試験会場にすっかり受験生がいなくなってしまった後。試験会場に唯一残っていた受験生は、どうやら私だけのよう。
……シャロのことは気になるけれど、とりあえず試験を最後まで受けることにしたわ。
幸い、この最終試練は室内での試験ではないから外へ行く際にシャロを見つけられるかもしれないし、制限時間も特に無いようだから、自分の力を集中して発揮できる。

「さて…少し彼女とお話がしたいところね…」

ソリエル様の方をじろりと見ると、一緒にいたもうポヴェル様は別の場所に移られて、彼女だけが退屈そうに残っている。
ソリエル様の試験を受ける受験生も数人程いたはずなのに、目の前にいるソリエル様に目もくれずさっさと出て行ってしまったのは、きっと序盤から最強格の彼女の試験を受けて挫折したくないからでしょう。落ちる確率は高いし、受かっても大量の魔力を消費する。…それくらいは私にも分かるから、気持ちは分かるけれど。

「あの、ソリエル様…!」

「おー、アナちゃん!久しぶりぃ〜、とうとう試練を受けに来たんだね!」

「あ、はいお久しぶりですね…じゃなくて!」

「うんー?異議申し立てかな?文句は一切受け付けないよ!この試験の仕組みは今まで変わってない“従来”の試験だからね!…まぁ、正確には数十年前から、のだけど。」

「うっ。す、すみません…試験の文句を言うつもりではなかったんです。ただ…」

「ああ、人選のことかな?それはまぁ…うん…うん!」

「バッチリ仕組んでるじゃないですか!!」

ぺろりと舌を出すソリエル様に脱力してしまう。彼女とは学生時代…どころか、幼少期から面識があるので、緊張せずに話すことができる。それに彼女自身が朗らかな方で、とても話しやすい人柄なの。
どうして私の試験を担当する大魔女様たちが、私のお母様を含む「あの方々」なのかはよく分からないけれど、ソリエル様のことを信じることにした。…それに、試験官に文句は言えないでしょう、やっぱり。

「ふぅ…とりあえず、決まったものは仕方ありません。早速、ライノー様かお母様の試験を受けてきます…」

「私の試験は最後に受けるつもりかな?他の受験生もみーんなそうなんだけど、なんでなのかねぇ。」

「ソリエル様…ご自身が警戒されていることに気付いてないのかしら…」

「ん?アナちゃん今なにか言った?」

「いえ…何も。」

ソリエル様は本当に分かっていないご様子。天然なところもあるみたいね。
彼女は、「大魔女」と称される100名の大魔女の中で、現時点のランキング1位。彼女より年上のライノー様、お母様よりも力を持っている…警戒されて当然よね。
彼女の試験を受けることになった他の受験生達はみんな頭を抱えていたわ。私も抱えたい気分だけれどね。

「さぁ!制限時間とかは特にないけど、ぱぱーっと終わらせておいで!」

早速一人目の大魔女様を決めないと。…いや、もう決まっているわ。

「まず始めに受けるとしたら…やっぱり…」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




「…あれ、ダイアナ先輩ですか?」

「あら、ベスタちゃん!前の集会ぶりかしら?久しぶりね!」

飛行魔術で堕の地区を出て魔の地区に入り10分程立った頃、一人目の大魔女様の試練を受けに行く途中で、偶然にもその大魔女様の娘さんで、私の一年後輩のベスタちゃんに出会った。
深緑色のショートヘアを後ろでくくって、縁のあるメガネをかけて会釈する彼女は真面目そうな印象。
実際、先日あった魔女集会でも欠かさずサポートをしてくれた、本当に真面目で良い子よ。

「ベスタちゃんは試験を受けてなかったのね。」

「試験?…ああ、今日は大魔女試練の最終試験の日でしたね。もしかして今、受験の最中ですか?」

「そうなの。詳しいことは言えないけれど、これからベスタちゃんのお母様の…」

「私に用だろう?」

「そう!ライノー様の…ライノー様!?」

背後に微動だにせず浮いているのは、当のご本人様!全然気配を感じなかった…こんなに大柄な方なのに!

「ふん、魔の地区へよく来たな。それでは早速受けてもらうぞ!」

「えっ、あっはい!」

むんずと両肩を掴まれたかと思うと、そのまま私を引っ張ったライノー様は、キルカ家のお屋敷まで超特急飛行!

「うわぁ!?ライノー様、もうちょっとスピードを…!」

微笑を浮かべてひらひらと手を振っているベスタちゃんの姿は、すごいスピードで消え去ってしまった。

「着くまでに酔っちゃいますよ!!」

「アハー、酔って吐いたら即不合格にしてやるよ!」

「そんな無茶苦茶な!!」

「はは…先輩、いってらっしゃい。がんばってくださいね―…それにしても。」

一人空中に残されたベスタは、一人苦笑いして言った。

「毎年うちに一定の魔女がこの時期に来るし、大魔女試練の内容大体分かっちゃうんだけどな…ダイアナ先輩、気づいてなかったりするのかな?先輩のお母様もうちと”一緒”なのに。…はぁ…






−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−








キルカ家のお屋敷の入口まで連れられた私は、腕組みをしてにんまりと笑うライノー様に向き合っている。
危うく酔いかけたけれど、なんとか普通に立っていられる。まさか初手からこんな目に遭ってしまうとは…

「さて、ダイアナちゃん!あたしの試練を受ける覚悟はできてるか?」

「は…はい!勿論です!」

彼女が大魔女、ライノー=キルカ様。魔の大魔女の中ではトップクラスの魔術の使い手で、魔界の中でもかなりの実力者。大魔女ランキングは脅威の2位。
彼女の試練は魔術の試験というより、ほぼ体力勝負の実技系の試験を出してくるでしょう。
ライノー様はとてもパワフルで朗らか、そして魔女にしては珍しく180センチをも越える大柄な方で、その大きな身体を生かした魔術の実技が大の得意。逆に、彼女は手先が不器用で細かい作業は苦手だってお母様が言ってたわ。だから、ここに着くまでに彼女は絶対に実技試験をさせるだろう、と予想は出来ていた。

(ライノー様は特別体力バk…凄い体力の持ち主だけれど、百人いらっしゃる大魔女様のうちほぼ半数が武闘派。魔法陣を用いたり、技術のみで評価される魔術しか扱わない方々なんてよほどの魔術のエキスパートよ。大魔女を目指すのなら体力も魔力もどちらもまんべんなく!が基本ね…)

大魔女は魔術だけ抜群に使えて、体力なんてこれっぽちも無いようなヒョロヒョロ集団、だなんて息巻いていた魔女を見かけたけど、きっと彼女はこの試験に落ちるでしょうね…
そもそも、体力が切れてしまうと魔力も使えなくなるもの。

「さぁ、試練内容は、『大魔女ライノーが作成した個人の試験場で、上級魔術を駆使し、かつ、魔術の精度を保ちつつ3時間耐え切る』!場所はあたしらの屋敷の庭!勿論結界付きだから安心して受けな!」

「分かりました…!」
(結構ハードな内容ね…でも、一体何に耐えるのかしら?)

「じゃあとりあえず庭まで案内するよ。入ってきな。」

「はい!……!?」

屋敷に入った途端、外との緊張感が全く違うことに早くも気付いてしまう。
なんだか…まだ試験場の庭にすら着いてないのに、どうしてこんなに今にも攻撃されそうな空気が漂っているのかしら…

(ライノー様とベスタちゃん、いつもこんな空気のところに住んでいるの…!?)

「おお、すげぇ顔してんなぁダイアナちゃん。あたしが用意した試験用襲撃技達、そんなに殺気立ってたか?」

「襲撃技…?」

そうだ、確かお母様が言っていたわ…「ライノーちゃんは学生時代からとにかく脳筋!何かあったらとりあえず暴力で解決するタイプのゴリ…じゃなくて、肉体派ね。魔術もとにかく攻撃するようなのばかりが得意、そうね、例えば襲撃に特化した魔術が一番得意ね…」

(まさか、試験に出てくる『耐える』っていうのは、彼女が一番得意とする襲撃に特化した…)

「いつもはこんなにピリピリしてねぇぞ?まぁでも、今日の最終試練日に向けてあたしも張り切ってんだ。」

ライノー様がそう言い終わると同時に、庭に到着。ここが最もピリピリしている。
さっきから嫌な空気を纏っていたものの正体は、彼女がこの大魔女試練の日に向けて、意気揚々と仕掛けていた大量の襲撃技…!物凄い数。目視で確認できるだけで数千…たくさんのバリエーションがあるし、無闇に避け続けても意味のないものもあるでしょう…

「あたしはダイアナちゃんに一切手出しをしない!代わりに、あたしが事前に用意したこの襲撃技達を捌いてみろ!さっき言った通り、使えるのは上級魔法で精度を保ちつつ、な。ずっと守備にまわるも良し、攻撃して技の威力を殺してしまうも良し。何でもありだ。」

「ライノー様…初手からなかなか体力をすり減らす試験を出題してきますね…」

「それは褒め言葉として受け取っておこう!昔からこういうのは得意だからな。さて、準備はいいか?そろそろ技の矛先をダイアナちゃんへ仕掛けるぞ。」

(ここで落ちてしまったらもう終わり。私は一生大魔女になんてなれない!多少無理をしてでも、必ず耐え抜かないと…!)
「絶対、乗り越えてみせるわ……」

「それでは、始めっ!!!」

ライノー様の大声が庭中に広がると同時に、私を逃さないと言わんばかりに、四方八方から魔術が飛びかかってきた。


次回 第七話「魔界の七英雄」

追記:とんでもない記録ミスを発見した為、内容を一部訂正しました。

ハノウ


投稿を違反報告 / ブロック



コメントをするにはログインが必要です : ログイン



🎄マジック・イルミネーション🎅【クリスマス特別書き下ろし小説】
ハノウ 3

千聖裕香は一匹狼な人間の少女である。 友人は少なく人付き合いもあまり好まず、...


EP1-13 新米先生と奇妙な生徒
ハノウ 3

「あーーもうーーー!ぜんっぜん終わんない!」 目の前には大りょうのにもつ。...



雑談 友達募集 ともぼ 御友達募集 把握会 募集 短文 初投稿 ペア画 原神 イラスト