【小説】二人の幸せよ永遠に（東方二次創作）

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「...紫苑。依神紫苑。それが君の...本当の名前だ」
「...え？」
彼の口から伝えられえたのは、衝撃の真実だった。
「君は半年前...交差点で、車にはねられた。そして...すべての記憶を失った」
彼は淡々と事実を述べる。
「...俺は、紫苑のことが好きだったんだ」
「え？」
彼は突拍子もないことを言い出した。
「...今までずっと一緒にいて、二人の時間が幸せで、紫苑の記憶がなくなったあたりから、本当に気が付いたんだ。
だから、忘れてくれていい。この一言は俺の後悔の詰まった言葉だから。」
彼は、少し間を開けると、私に向かって微笑み、
「紫苑。俺はあなたのことが大好きでした」
彼は、寂しそうに言った。
なんでだろう。本当に知らない人ならこんな気持ちになるわけないのに、
学校でも、私は不思議と彼に惹かれていた。
わたしにとって何か大切な人なんじゃないかとうっすら感じていた。
空白の記憶。どうして空白なのかわかった。私はトラックにはねられた。
それから...何も思い出せなくて、看護師以外に初めて病室に来たのが彼だった。
あの時から、彼には何かを感じていたのだ。
本当の赤の他人なら...こんな気持ちになるはずない。
こんなに悲しい気持ちになるなんて、あり得ない。
「...ｯ...」
私はなぜか涙が出た。
何も思い出せない自分が悲しくて、でも、彼が記憶をなくす前の私が好きだったんだと言ってくれて、うれしかった。
私は昔の記憶がほとんどない。彼と私がどういう関係なのかもわからなかった
「...大丈夫？」
「...」
私はしばらく黙り込んでいた。
彼になんて言えばいいかわからなかったから。そして。
何か、思い出せそうだったから。
そこで私はあること思い出す。
私が最近見ていた川遊びの夢、その夢に出てくる子供がはやとにそっくりなのだ。
どうして、と考える暇もなく、私は一瞬でその答えを理解させられた
吸い込まれるように、私の記憶が戻っていく。
記憶というのはある一種のトリガーを起動させることで簡単に戻るらしいが、戻りすぎではないだろうか。
そして、すべて思い出したころ、私は口を開いた。
「...はやと...」
「...何？」
「...はやと！」
私は泣きながら叫んだ。

「...え、お前」
そう。今まで俺をはやと呼びしていたのは紫苑だけだった。
蒼井でさえもはやと“君”とついていた。
俺はこれだけでは確証が持てず聞き返す。
「...お前...記憶が...」
「...うん！戻ったよ！思い出したよ！」
彼女は泣きながらも、うれしそうに笑っていた。
突然すぎた。でも...安堵した。
すると俺もなんだか泣けてきてしまった。
俺たちは静かな病室で、二人で泣き笑いしていた。

※ ※ ※ ※ ※

あれから十年がたった。
俺たちは付き合って...結婚して、今では幸せに暮らしている。
あの時、俺は真実を伝えてよかったと思えた。
おかげでこの今がある。
［ということでこの日記も終わらせようと思う。
最後に...これからも俺たち二人の幸せが続きますようにと願った言葉を。］
俺はそこで少し考え、日記に書き込む。
「なーに隠れて書いてるの」
「おわっ...びっくりした」
紫苑が後ろからひょっこり顔を出して覗いていた。
俺は慌てて日記を閉じる。
「何このノート...ちょっと見せて」
「ダメ。黒歴史。見るのだめ、絶対」
「なら余計に見たい」
「ふざけんなよおい！」
それから、日記を見せる見せないも攻防戦が始まった。
この様子じゃ、終わりそうにない。
それじゃあ、これを見ている君たちに、特別に書かれた言葉を教えるとしよう。
その言葉は＿＿＿＿＿＿

［二人の幸せよ永遠に］

END