【小説】[08:悲惨な過去](東方二次創作)
神の風をふかしにきたぜ! 小説 #この世に一人の俺と君最高ランク : 1 , 更新:
「...そうね。わかったわ」
さとりはそう言っているが、きっとしぶしぶ了承したのだろう。
だが、俺の過去を聞いておいて自分は話さないということへの申し訳なさでも感じたのだろう。
「...あなたと弟君に近いわね。私の妹...古明地こいしは、私と仲がとてもよかった。そして、私と同じようにいじめられていた。でもいじめられていたと分かったのは...こいしがいなくなった後だった。
こいしは私の前ではずっと笑顔だった。私に弱みを、辛そうな顔を見せなかった。
そしてあの子は...自分の部屋で首を吊った。
私に...”強く生きて”と書いた手紙を残して」
それから彼女はこいしの話をしていた。
こいしといった場所、こいしとしたこと、いろいろ話して、思い出に浸っていた。
俺はそんな彼女の話を...ただただ静かに聞いていた。
「...それで、こいしが転んじゃって...って、私の話ばっかりになっちゃったわね、ごめんなさい」
「...いいさ。楽しかったし」
「...久々に、こいしに会いたくなっちゃったわね」
「...俺も裕也に会いてぇなぁ...」
「あはは...そうね...お互いにつらかったのね」
さとりは朱色に染まった空を見つめていた。
「...お互いに大事な人を失って...そして、あなたはいじめをなくすために、私はいじめに耐えて必死に生きてきた」
「...俺は、なくそうとしても何もできなかったがな」
「...しかたないわよ。どの時代もいじめってものは必然的に起こるのだから」
「...だとしても、俺はやるしかないんだよ」
「...そう。私はそれの第一歩かしら?」
「...そうだな」
俺とさとりは二人で微笑を浮かべた。
そして、また話し始める。
「...あなたに出会えてよかったわ」
「...そうか。それは良かったよ」
「ええ。本当に...ありがとう」
「...どういたしまして」
どうしてだろう。
俺はなぜここまで彼女に肩入れしてしまうのだろう。
俺は空を見つめ考えていた。
...俺は別に、ただいじめをなくしたいって思いで生きてきた。
だがその壁は絶望的な高さのものだったのだ。
でも、俺はそれでもあきらめたくなくなった。
なぜなら、”こいつ”がいるから。
こいつに、今までの苦しみを忘れるくらい、幸せになってほしいと思ったから。
境遇が似ていたからか、それとも衝撃的なかかわり方によるつり橋効果みたいなものだったのかは知らない。
でも、それでも、俺はこいつに幸せになってほしいと思うようになった。
ふと、さとりの顔を見る。
彼女は笑っていた。
強い風が吹く。屋上の土煙が舞う。
彼女は笑っていたのだ。嬉しそうに。
俺はそんな彼女の顔が、とてもとても、
美しく見えたのだ_____
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