心の臓を論破してみようか。

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初恋という甘酸っぱい恋をに撃ち拉がれた彼女に対してピエロのお面を被った男は話かける。

「強がるのも疲れたでしょ？」

彼女は無言で俯いたまま。
涙の後はついていたが、それを被せるかのように更にナイアガラの滝のように泪は溢れてきた。禁句だったのかもしれないが、ピエロの男はまだ続ける。

「フラれても仕方ないさ。それにまだ、お前は告白もしてない。彼女といた姿を見て勝手に失恋したんだ。まったくもって相手からしたら迷惑なものさ」

デリカシーも欠片もないこの酷い言葉。
しかしそれは、少なからずも正論であるから彼女は何も言い返せず先程からずっと口を固く結んでいるまんまだ。
泪はまだまだ溢れる。
明日で彼女の卒業式だというのに、3年間着ていた制服は涙でぐちゃぐちゃよれよれとなってしまっている。今の彼女にあるのは哀だ。愛ではなく、哀だ。

ピエロの男は陽気にケラケラと笑う。

とてつもなく最低で失礼な男だ。

男ならそこは背中を擦り抱き寄せるといったシチェーションが定番なのだが、こいつには乙女心もなにもくそもない。

「まずさ、恋って涙を準備してから始めるもんなんだからね。準備してないやつのしてる恋は偽物。でも持ってるじゃん、お前は涙。ちゃーんと」

違った。
少なからずも乙女心があった。

「新しく涙用意して今度は僕でも相手にしてみたらどうかな？どうせお前暇人だろ。明日卒業式終わればお前ただのニートだしな」

悪戯っ子のような笑みをそのピエロのお面の中から覗かせたこいつに、彼女の運命が素晴らしい方向に左右されるとはまだ誰も分からない話。そしてこの男が実は小学生の時から彼女のことが好きで18年片想いしていたのも、更に10年後知るお話。

心の臓を論破してみようか。
(お前の心にあるヤツへの想いは論破できたかな)