1ー1 綴央くんと猫

#つおかのしか勝たん つおかの 小説
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《今度さー、猫カフェ行かない?》

LINEの通知音が部屋の空気を震わせた。
開いてみればその文面。
心拍数がどっと上がったのは言うまでもない。

猫カフェ。
猫は、私と彼――咲木綴央の共通の " 好き " だった。
綴央くんは猫の写真を撮れば私に送ってくれるし、私はそれを見て癒される。
写真を私から送ることがないのは、私に撮影の腕がないからである。
日頃から「撮り鉄」として写真撮影にいそしんでいる彼は、何を撮っても抜群に綺麗な一瞬を切り取る。
修学旅行もそうだった。
あんなに綺麗と思える夕日の写真、今まで見たことがない。

…っと、話が逸れた。
綴央くんからのメッセージに秒で既読をつけ、秒で返事を飛ばす。

〈行きたい…!〉

そう返す以外に、方法はなかった。




そしてある土曜日。
午前中の部活をこなし、方向が同じ後輩たちと共に帰路につく。
その中には勿論、綴央くんの姿も。
ちなみに今は11月上旬。
中学3年の私達は受験期真っ最中である。
なぜ部活に参加しているかというと、1月のアンサンブルコンテストに出場するから。
私は私立を受けないことを前提に練習に参加させてもらっている。
…が、最近滑り止めはやっぱり必要じゃないかと今更ながらに思い始め、どうしようかと頭を悩ませているのが現状。
私立受験のことは顧問には話さず、このまま突っ走ることだけは決めている。
綴央くんは、夏休みのコンクールに向けての練習で合唱に目覚めたのか、はたまた私の愛する合唱部の後輩たちを気に入ったのか、野球部だったにも関わらずコンクールに出る意思を示してくれた。
彼は野球でスカウトされスポーツ推薦での私立入学が確定しているため余裕の表情を見せている。
何か評価されて入学を決めた、なんて、本当に羨ましい。

「じゃあ、私はここで。皆お疲れ様」

分岐点で皆と分かれる。
こっちの方向は私だけだった。

「先輩も、お疲れ様です!」
「ゆっくり休んでくださいね!」
「受験勉強も頑張ってください!!」

…うん、最後のは禁句。
聞かなかったことにしよう。
怒られそうだけど。

「綴央くんもお疲れ様。今日もありがとね」
「俺はやりたくてやってるんだし。お礼とか良いよ」
「そっか。嬉しい」
「じゃ、またあとで」
「ん。うちの前着いたら連絡して」
「おけ。じゃね」

手を振って遠ざかっていく彼に、手を振り返した。
猫カフェに行く約束をした日は、今日だった。


《着いたよ》
〈今行く!〉

約束の時間より5分早い。

「行ってきまーす!」
「いってらっしゃい。楽しんでね」
「はーい」

私が綴央くんを好きだと知っている母の笑みを含んだ返事に苦笑しながら家を出る。
線路沿いにある私の家。
流石と言うべきか、低めのフェンスに腕を乗せて電車を眺める綴央くんの姿が目に入った。
…絵になるんだよなぁ…。
写真撮りたい。下手だけど。
カレカノだったら、容赦なく撮るのにな。
休日に2人で出かける受験生、端から見ればカップルに見えるんだろうな、と思いながら「やっほ。さっきぶり」と声を掛ける。

「っしゃ、行くかぁ」

ぐいーっと背伸びをして歩き出す綴央くん。
慣れない私服に私の心臓が爆発しそうなことを、彼は絶対知らない。




〔続〕

つおかの運営委員会


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やっぱ上手すぎて、住んでる次元が違うような気がしてきた…()

栞和
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ありがとう…!
次元は同じだけど、w


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1-2 綴央くんと猫
つおかの運営委員会

「とーちゃく」 非常にリラックスした彼の声。 綴央くんは私とは違って、毎日...


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