【短編小説】雨宿り 【1】

小説 短編 創作
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最高ランク : 35 , 更新: 2017/08/11 3:43:59


雨が降っていた日の話でございます。水城少年は、黒い傘を差してテクテクと土の道を歩いていました。黒い傘は、少年には大きいように見えましたが、それも当たり前。傘は少年のではなく、少年の父親の物なのであります。

少年の傘は、ニ日前の大雨で骨が何本も折れてしまい、もう使い物になりません。水城少年が雨の中を歩くには、雨合羽を着るか、濡れて歩くか、もしくは誰かに傘を借りるほか無いのであります。

水城少年はおそらく十一、十二歳に見えます。少し茶色に近い髪は、雨のせいか、濡れているようです。傘を差しても、きっと濡れることは防げないのでしょう。ハーフパンツも、じわりと色が濃くなっているのが分かりました。

さて、何故彼が雨の中歩いているのか、読者諸君は不思議に思ったことでしょう。……思ってない?そうですか。でも聞いて下さいな。彼は年相応に、友達と遊んでいたのであります。昨日の天気予報では、『明日は一日晴れでしょう』と言っていたので、彼――とその友達――はそれを信じて遊びに出掛けたのです。

ところがどうでしょう。一週間前から降り続いている雨は、そんな簡単に止むはずもありませんでした。少年が友達と会ってから、三十分もしないうちに、まさにバケツをひっくり返したような雨が降り始めたのです。少年の父親が、出掛ける前に彼に傘を託したのが不幸中の幸いだと言えましょう。

そんなわけで、水城少年は待ち合わせの場所であった公園から、一人でとぼとぼ帰る途中。「天気予報なんて嘘っぱちじゃないか」と頭では考えておりました。

このままでは、家に着く前にびしょ濡れになってしまいます。それを察した水城少年は、どこか雨宿りの出来る場所を探し始めました。丁度良いところに見えたのは、屋根の付いたバス停。少年はこれといってバスを利用した思い出はありません。ですが、『真宵村バス 日影ヶ丘三丁目』と書かれたプレートを見れば、誰にでもそれがバス停であることは分かるでしょう。

バス停の屋根はトタンで、雨の打ち付ける音が響きます。柱は細くかしいだ木。後ろにはやはりトタンで出来た壁。そこに小さくまるで存在感のない木のベンチが見えます。かなり弱々しくはありますが、一時的な雨宿りにはもってこいでしょう。

と、そこに人影があるのに気付いた水城少年。八歳くらいでしょうか。耳の下あたりで切り揃えられた、いわゆるおかっぱの子どもです。真っ黒いおかっぱの髪を見ながら、水城少年は小さい頃に見た映画の、ある登場人物を思い出しましたが、少年の思い描いたその人物とは、全く違うように思われました。

目じりが下がり気味の子どもは、黄色い雨合羽を羽織り、雨だというのにビーチサンダルを履いていました。男の子のようですが、女の子と言われても信じてしまいそうです。その格好を疑問に思い、水城少年はバス停の屋根の下まで、大きい傘を持って近付きました。

「えっと、どうしたの? 君、一人?」
「お、お兄さん誰?」

驚いたことに、その子どもはこの雨の中、一人でいたのです。迷子。その言葉が水城少年の頭の中に浮かんでは、消えません。迷子だとしたら、どこではぐれ、どこの家の子どもなのかを聞かなければなりません。

「僕は、水城優雨。君は迷子なの?」
「えっと……雨宮雫っていうの、ぼく。お母さんとはぐれちゃって、その、傘もなくて……」

雨宮雫、と名乗った子どもは、少年の考えたとおり迷子なのでした。雫君は、この雨の中母親を探しながら、濡れて、このバス停にやって来たのでしょう。アア、なんて可哀想な雫君!この狭い村で迷子になるということは、よその村――もしくは市、区、町、県……。さすがに国はないと思いますが――から来た子どもでしょうか。それなら尚更可哀想に思えましょう。

「雫君、どこではぐれたか分かる?」
「うーんと、分かんない」
「じゃあどこのおうちかは分かる?」
「えっと……川が近くにあるところ」

川。この村で川と言えば魔宵川くらいです。きっとその近くなのでしょう。まさかここまで聞いておいて、放っておくわけにもいかなくなり、水城少年は雫君を家まで送ってあげようと思いました。ここは日影ヶ丘三丁目。バス停がある場所に沿って坂を下れば「時雨橋」というバス停があります。橋があれば川もあるでしょう。

***
20時って言ったのにもう22時半……

読みづらいですかね?
文体は江戸川乱歩風です((
いつもはこんなんじゃないけど笑
いつも→http://uranai.nosv.org/u.php/novel/aLice/

\宣伝ぶっこむ/

妃有栖


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おお、涙先輩!
ありがとうございます!時間があるときにまた続き書きますね~(*´∇`)


妃有栖
2017/08/11 3:42:59 違反報告 リンク


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