理由【短編小説】

小説 短編 創作
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最高ランク : 5 , 更新: 2017/10/24 8:29:33


全てのことに理由が必要か、と云われたら僕は迷わず「NO」と答える。勉強することに、運動をすることに、ピアノを弾くことに、読書をすることに。理由などいるものか。

理由を問われて、すぐに返せる人を僕は見たことがない。勿論、数学や理科の問題は別として。「何故ヨウ素液に浸したら青紫色になったのか答えなさい」なんて、本当は知らなくてもいいのだけれど、答えられなければテストで点数を取れないから。

結局、何でもかんでも「何故なのか」「どうしてなのか」なんて理由を突き詰めていっても、何かが変わるわけでもないのだ。「何故空は青いのか」気になるかもしれないが別に知らなくても良い。知ってて得をすることもない。

僕は理由を聞くのも聞かれるのも嫌いだ。なぜならーーって、ここで理由を説明する接続語を使うのも嫌い。とにかく嫌いなのだ。

そんな僕にもどうしても聞きたいことがある。そして矛盾しているかもしれないが、それは彼女のある「理由」だ。

彼女の怒ったところを見たことは一度もない。それは彼女が怒るのを我慢しているとか、そういう訳ではない。本当に怒っていないのだ。きっと、心の奥底から。

「欲はなく、いつも静かに笑ってる」
ーーそれが彼女だ。

放課後の図書室は電気を点けなければ薄暗い。僕がトイレに行っていた間に、彼女はいつものように窓際の椅子に座って本を読んでいた。鍵が開いていたとは云え、勝手に入るのも悪いとは思う。しかし、そもそも鍵を開けてトイレに行ったのは僕なので何も反抗できない。

「今日は何を読んでいるの? 詩乃ちゃん」

僕がそう聞くと、詩乃ちゃんーー鈴木詩乃ーーは顔を上げてにっこりと微笑んだ。詩乃ちゃん
は本当に、にっこりという表現が似合う笑い方をする。

「『夫婦善哉』だよ。文也さん」

文也、は僕の名前だ。フルネームで、小田文也。夫婦善哉は確か織田作之助だったか。最近の彼女のブームはオダサクこと織田作之助のようだ。詩乃ちゃんはすぐに目線を本に戻してまた文章を追い始めた。

静かな時間が続く。

と、突然図書室のドアが開いた。入ってきたのは野球部の男子。名前は覚えていないが。前に一度、野球の本を借りに図書室に来たことがあったが、その本を返しに来てからは一度もここに来ていない。

すごい勢いで、焦ったように図書室に駆け込む彼。そして彼の後から、「おい山口、お前ふざけんなよ!」という罵声が聞こえてくる。山口と呼ばれた彼は図書室を逃げ回った。そして声の主が現れ、図書室内で鬼ごっこが始まった。
詩乃ちゃんはというと、終始気にしないで本を読み続けていた。

「すみません、長野センパイ! でも俺は⋯⋯!」

長野と山口。県名かとツッコみたくなったが止めておいた。そろそろ僕は注意をしようと立ち上がった瞬間、山口が転び、本棚に突進。本は何冊か床に落ちた。これには詩乃ちゃんも驚いたようで、顔を上げたのが見える。

それをいいことに長野が山口を捕まえる。全く、県名同士仲良くすればいいのに。山口は幸い怪我はなかったようで、大人しく長野に捕まった。詩乃ちゃんは颯爽と立ち上がり、

「私が片付けておくのでいいですよ」

といい、床に落ちた本を手に取った。


「詩乃ちゃんは、何で怒らないの? いつも笑ってるよね」

本を片付けながら僕は詩乃ちゃんに聞く。詩乃ちゃんは僕を真っ直ぐに見てこう云った。

「だって、怒って喧嘩した次の日、もしも相手が死んじゃったら、一生後悔すると思わない?」

三つ編みを揺らしながら彼女は答えた。相手が死んじゃったら、なんて考えたこともなかった。

「そりゃあ、怒りたくなる日もあるし、喧嘩もしちゃうかもしれないけど。でも本当に仲直りできるかは分からないからね。だから早く仲直りしたほうがいいし、そもそも怒らないようにすればいいでしょ」

まだ十五歳。だけど詩乃ちゃんは僕よりも大人びた考えをしているようだ。詩乃ちゃんが怒らない理由。僕にとって理由などいらないものだったが、こんな理由だったらあってもいいと思った。

「文也さんも怒らなそうだよね。って、あ」

「詩乃、やっぱりここにいたのか。早く帰ろうぜ」

開いたままのドアの先に、顔の整った制服姿の男子が見えた。詩乃ちゃんの、所謂彼氏だ。詩乃ちゃんは彼氏さんに近付いて、何やら笑顔で話している。

「あっ、ごめんね文也さん。手伝うよ」

「いや、いいよ。詩乃ちゃんは図書委員でもなんでもないしね。図書支援員の僕に任せて、帰りなさい」

詩乃ちゃんは、少し戸惑ってから、彼氏さんと一緒に廊下へ出ていった。出ていく前に手を振っていたので、僕は控えめに振り返しておいた。彼氏さんが嫉妬しないようにーーしないか、こんな大人の僕に。

「明日は怒らない日にしようかな」

流石に、詩乃ちゃんのように毎日怒らない生活というものは難しい。けれど、一日くらいなら大丈夫だろう。彼女が怒らない理由。それは、大人びた詩乃ちゃんの考え方のせいなのだろうか。


最後意味不明((

ほのぼのを目指したつもり。
ほのぼのとはなんぞや((哲学

少女×大人の男性の組み合わせが好きなんです((
男性が素敵なオジサマならなおよし
少女がちょっとわがままなのもよし。
オジサマがロリコン気味でもそれはそれでよし

そういう意味では文ストの森さんとエリスちゃんは最高ですね((

妃有栖


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なるほど、私は何でもかんでも理由を突き止めたくなるタイプです(((
相手が死んじゃったら…なんて考えたら恐ろしくて喧嘩なんてできない…!!!
なんて大人な考えなんだ詩乃ちゃん…


きなこもち
2017/10/25 6:20:39 違反報告 リンク


きなこ⇒私は理由は突き止めたいけど考えてるうちに他の疑問が湧いてきて結局わからなくなるタイプ((
仲直りしないまま別れちゃったら絶対後悔するよね⋯⋯!
詩乃ちゃんのようになりたいね、私は日々怒ってるから((


妃有栖
2017/10/26 6:04:32 違反報告 リンク


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