近代文学をまとめる個人的メモ そのよん

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最高ランク : 22 , 更新: 2021/01/23 22:15:03

自然主義について。


ここまでは同時並行で流行った写実主義、擬古典主義、浪漫主義について説明してきました。


自然主義は上の三つから少し時代が動き、1900年代に突入します。


自然主義は写実主義から傾向を引き継いだ文学で、島崎藤村の『破戒』にはじまり、田山花袋の『蒲団』によって傾向が決まったとされています。



島崎藤村は浪漫主義の最後にも名前を挙げました。「まだあげ初めし前髪の」から始まる「初恋」という歌がとても有名です。


七五、七五で書かれているのでリズムよく音読できます。


もとは詩人だった島崎藤村は、1906年、『破戒』という小説を自費出版しました。


『破戒』という小説は、部落差別を取り扱ったもので、被差別部落出身の主人公が、隠すように言われていた出自を明かすさまを描いています。


これは、「隠さなければならない」という定着してしまった暗黙の了解を打ち破り、自分の意志で行動する、前回書いた自我の覚醒につながる内容になっています。


田山花袋の『蒲団』という小説は、女弟子に恋をした主人公が、彼女が下宿を出て行ったあと、使っていた寝着や、蒲団の匂いを嗅ぐ、という場面で締めくくられる、今からしてもかなり衝撃的な小説です。


少女漫画とかを見ているとよくわかりますが、物語の中の恋愛って、どこか美化されていて、絶対こんなきれいな感情だけで構成されてるわけがないってなるものが多いと思います。


『蒲団』は、恋愛を描いていても、そこに含まれるフェチズムだったり、欲望だったりを赤裸々に描いているのが、当時とても新しかったんです。



結局この二つの小説で自然主義はどんな形で形成されたのかというと、露悪的に個人を描く文学になっていきました。


とにかく赤裸々に、露骨に、事実だけを描こうとしたのです。


作者自身の体験談であったり、作者の身の回りの人物のネタだったり。


今でいうゴシップ記事のように流行りました。とっても流行りました。


「自然主義にあらざれば文学にあらず」なんて一時期言われたくらいには自然主義ばかりが流行りました。


作者の身の回りを描く、という小説は、「私小説」という形で後世に引き継がれ今もちゃんと残っています。


「私小説」の始まりはここなんです。


自然主義の主な作者を挙げると、先ほど挙げた島崎藤村、田山花袋、それから尾崎紅葉の時に名前を挙げた徳田秋声、正宗白鳥、あたりでしょうか。


島崎藤村は本名島崎春樹。


『破戒』のほかに『新生』もかなり有名ですね。姪を妊娠させておいて自分はパリに逃げるという話、事実だというんでどうかと思います。


日本ペンクラブの初代会長になったり、文壇ではかなり有力な人でした。現代でも名前は知ってる、という人は多いんじゃないかなと思います。


田山花袋が臨終のとこについている時、「死ぬのはどんな気持ちだ」と聞いたっていうのも結構有名な話。


田山花袋は本名田山録弥。『蒲団』は超有名だけど、ほかにも『田舎教師』とかがある。


浪漫主義で名前を挙げて、自然主義にもしばしば名前の挙がる国木田独歩とは大の仲良しで、一緒に暮らしてたこともあった。


一緒に暮らしてた時のエピソードは花袋が『KとT』に綴っています。


喧嘩したとき、独歩が「いまここで自害したまえ、ちょうど短刀があるから」って言ったエピソードが好きです。


独歩は結核で若いうちに死んでしまいました。


死の直前、「話したいから来てくれ」と手紙をもらった花袋だが、連載小説の書きためが少なく、もう少し進めて朝出て行こうと決意します。


そして夜中に死の電報をもらった花袋は「あ、とうとういけなかったか」と呆然としたといいます。


このあたりの話は『独歩の死』に入っているのでぜひ。


徳田秋声は二人よりも少し後に登場して、『あらくれ』や『黴』が有名です。


田山花袋と共に50歳の誕生日パーティーをしたり、低迷していた時に後援会ができたり。


彼は尾崎紅葉の弟子なのですが、まず最初に弟子入りの志願をした時、送った原稿に「柿も青いうちは鴉も突き不申候」と添えられたといいます。


鏡花の口添えで無事弟子入りで来た秋声ですが、鏡花との仲は悪く、紅葉の死後「先生はお菓子の食べ過ぎで体を悪くした」と発言してしまったり、紅葉ガチ勢の鏡花には耐えられないことが多かったのか、火鉢を飛び越える勢いでぶん殴られたりしていたようです。


両者と交友のあった里見弴は秋声に仲を取り持ってくれ、と願われて「どっちかが死にかけでもしないと無理じゃないですか?」なんて返しています。


徳田秋声はノーベル賞作家の川端康成がとても高く評価していた、というのも有名です。批評とかをいろいろ書いている方なのでその辺も調べてみると面白いかもしれません。



随分と長くなってしまったのでこの辺で切ります。



自然主義の次は夏目漱石です。


の前にこれまでのものをいろいろつけ加えたり修正したりしたい。

lemon1925kazi


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初めまして、FF外からすみません
島崎藤村の『破壊』は少し読んだことあるのですが難しくて内容がいまいち掴めませんでした。
でも自我の覚醒に繋がる内容だったんですね。とてもわかりやすい文学まとめありがとうございます。


nemuinemui5
2021/01/23 22:39:56 違反報告 リンク


はじめまして。『破戒』に関してはまるっきり素人の解釈なので間違ってるかもしれませんがお役にたてたのなら何よりです! 読んでくださってありがとうございました。

lemon1925kazi
2021/01/24 2:37:06 違反報告 リンク


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2021/04/13 4:27:45 lemon1925kazi

1868年 五箇条の御誓文 が提示され、長かった武士台頭の時代が終わりを迎えます。...


近代文学メモやり直しそのいち
2021/04/13 3:38:08 lemon1925kazi

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読書感想文って
2021/03/26 23:30:33 lemon1925kazi 1

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