君と出会えたこの１年 #３

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最高ランク : 20 , 更新： 2021/01/03 3:09:10

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──産声を聞いたのは幻だったのだろうか？

それから５０年経った

彼女が死んでから５０年

僕は何も変化しなかった

年を取らないのだ

周りの環境が変わるだけ

でも国民は

『賢王だから国を治め続けると神に定められた方なのだ。』

と勝手に語り継ぎ、勝手に崇め、そして喜ぶ

僕はそれが苛立たしい

この国が平和なのは偶然だし、この偶然のために失われたものが僕の半身だと思うと憎しみがぶわりと沸き上がる

世継ぎを作ろうが僕が在位している間に死んでしまう

既に３人の息子が天寿を全うした

情のない女と交わった子供であれど、血の繋がった息子であることに代わりはない

慈しみ育てていた

なのに何年経っても容姿が変わらない

何故だ

最初は分からなかった

そんな自分がおぞましくて堪らない

息子が年を取る姿を見て僕は悟った

あぁ、これは彼女の呪いなのではないのか

そう信じた

７０歳であるはずの我が身が容姿が変わらずにのうのうと生きている

それだけで罪なのではないかと

全てから逃げ出したくて堪らなかった

だから彼女と別れたときの平民の服

そして骨のペンダントを首に掛け、王城から抜け出した

いくら走っても疲れがない

体力すらあの時のままで

何もかもが嫌で

思わず涙が溢れる

やっと走ることが疲れて

そこに立ち止まる

みっともなく泣いている男がこの国の賢王だと言われている人物

みな、さぞかし笑うだろう

惨めと

嗤うだろう

「っ..... ぅあ........」

我慢していた嗚咽が出てしまったとき

「大丈夫かい？坊や。」

そっと渡されたハンカチと共に嗄れた声が聞こえた

体がぶるりと震え、思わず何も言わずに老婆の顔を見る

その瞬間

カチリ

そんな音が頭に響き、

僕は何かが始まってしまった

終わりへ向かうために

そう、漠然と感じた