春色に
Alice 小説 創作最高ランク : 12 , 更新:
「わたしね、春が一番好きなの」ってはにかむ君の笑顔も毎年花見に行ったことも、そんなことも全部思い出の一つとしてしまい込んでしまって、いつかは「そんな人もいたね」って言われちゃうのかな。
付き合っていたことが嘘みたいに、君のInstagramから僕といた痕跡が消されてく。忘れ去られていく。まるで僕といたことが汚点かのように。
駅のホームで半年ぶりに見かけた君に声をかけようとして辞めた。僕の知らない君だった。履き慣れてないパンプスに、明るかった髪も暗く染めて、シワのない綺麗なシャツを身に纏った君。僕の見慣れた君はもうそこにはいなくって、なんだか眩しかった。僕のことなんて忘れて、僕の知らない方へ歩いていくんだろう?
ドラマの中の人間関係はどれだけ複雑だって12回で完結するんだけど、現実での人間関係は「またね」で終わったりする。僕と君だってそうだ、「またね」って言って、来週だって会う約束をしてた。だけど君は来なかった。君のInstagramで、僕じゃない男とデートしてたことを暫く後になって知った。僕はもう用無しだったのかな。
まだ君のことが好きだって言ったら困るかい? まだフォローしたまま外せない僕のことは、意気地無しだって笑ってくれたらいいよ。それで君の気が済むなら安いもんだ。なあ、ブロックしてこないってことはまだフォローしててもいいよってことかい? そうやって僕のいい様に解釈したっていいかい? 嗚呼、まだ君のことを忘れられない僕は女々しい。
君が長かった髪を短く切ったことを知った。僕が触れた君の髪はもう無くなってて、「もうあんたの私じゃないの」って言われてるみたいで嫌だった。君の中から、君から、僕が消えていくのが怖かった。僕の中に、君はまだこんなにも色濃く残っているのに。
君の新しい日々にダサい僕は似合わないんだよな。君の新しい男は僕なんかよりずっと格好良かったしお金もありそうだった。だからもう僕のことなんて忘れて、いやもう忘れてるかもしれないけど、君は新しく進んでくれたらいい。もう戻れないってわかってるけどまだ踏み出せないんだ。履き古したボロいスニーカーで、君の選んでくれたリュックを背負って、君のこれからの日々が素敵であります様に。
君は綺麗だ。
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