愛を伝えそびれた

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愛を伝えそびれた
この手を離したくなくて、それが偽善って分かってたのに「もう一度」と縋ってしまった。何回も何回も「ねえ、もう一度だけ」って縋ってしまった。こんなことになってしまうぐらいなら小さな愛を伝えておけば良かった。好きだよって、あなたが好きだよって伝えておくんだったな。でも私、たしかにあなたに恋をしていたよ。あなたのことが本当に好きだったよ。

温くなった微糖で乾杯。オリオン座が澄んだ空に見えて切なくなる。何処にも行けない私たちは宙ぶらりん。好きになっていいのは体だけ、心に手を出してしまえば終わってしまう。ねえ、あなたの言うとおりにするから。言いなりになるから、もう少しだけ笑っていて欲しいの。

人を好きになったと気づくのはもう戻れなくなってからだ。気づいてしまえばもう自分の気持ちに嘘はつけないし、好きじゃなかった頃には戻れない。何処からを忘れてよくて何処までを忘れたいのか？

ああ、それだけの関係だった。そういう運命だってわかっていた。いくら頑張っても私はあなたの一番にはなれないし、いつか終わってしまうってことぐらい分かっていた。終わってしまうなら、あなたに手を払われても好きだよって言っておけば良かった。あなたが好きだよって。でも、そんなあなたが好きだった。あなたが好きな自分も好きだったの。

無駄話で良いから話したかった。その無駄話に全てを隠した。私のことを忘れて良いのはあなただけなのに、忘れたいのはどうやら私だけらしい。それだけ私はどうでも良かったってことなのね。

もう終わりにしよう？
その言葉がいつか来るのが怖かった。まだあなたに恋をしていたかった。こんな恋やめてしまいたかったけど、まだあなたに恋焦がれていたかった。そう言う運命を選びたかった。あなたに愛を伝え損ねてしまったから、今度はあなたにちゃんと愛を伝えようかと思うの。もしも生まれ変わってまたあなたに出会えたら。

あなたの綺麗な背中も、怠惰なキスも、湿った髪も。

またあなたと出会えたなら、あなたにバレないように気づかれないように愛を伝えようと思ってるの。もっとちゃんと、きっともっと。もう二度とあなたを手放してしまいたくないから、少しずつ何かを捨てて何も考えずあなたの隣に居られるように。言葉を捨てて、少しずつ諦めて。儚い今日を抱き締めて。

有難うすら言えなそうだから、あなたの家のポストに合鍵を入れておくね。
さよならをしよう、私の気持ちごと全部さよならをしよう。たった今、あなたへの想いまで手放すの。