セブンスター

Alice 小説 創作
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セブンスター

1人になって1日が経った。夕方が来て、夜が来て、朝が来て、昼が来て、夕方が来た。まだ私は家から出れない。

寝坊ばっかりする君の為に5分早めたこの時計ももう意味ないな、マイペースな君の目を覚ます為に毎朝コーヒーを淹れる癖も治りそうにないよ。

セブンスターの香り。少しだけ開いた窓サッシから流れてくる香り。煙がふらふら上がって、夜に上がる煙が綺麗で。私がたばこが嫌いなこと知ってた君はいっつもベランダで吸ってくれてた。たばこを吸う君の後ろ姿が好きだった。ニトリで君と選んだカーテンが揺れて、君がいないことを思い知って、泣きそうになる。

「もっと私のことを見てて、もっとちゃんと見てて」って言ってしまう癖が、それが君には重たかったのかな? そんなことを言わなければ君はまだ私の隣にいてくれた? いくら考えたって分からないんだよ、君が私と一緒にいてくれた理由が、私を好きになってくれた理由が。

私のことを一番に知ってるのは私じゃなくてきっと君だろうな。眠たい時は体があったかくなることや、短いキスが好きってこと。

私は君のことどれだけ知ってたんだろう? あんまり分かってなかった気がするな。一番覚えているのは、君が好きなセブンスター。

「もっと君のことを見てれば、もっとちゃんと見てれば」って今更。今更そんなことに気づいたって無駄だよね。今気づいたってなんの意味があるんだろう、もうここに君はいないしもう戻れないって言うのに。

セブンスターが床に転がっていて、懐かしさに涙がこみ上げて来て、思わず拾った。君が置いて行ったたばこ。大嫌いなたばこ。君が置いて行ったちゃちいジッポを、手に取ってしまったんだ。

どうして火をつけちゃったんだろ、大嫌いなたばこに。

君の匂いがしたんだ。懐かしい君の匂いがした。笑って私の頭を撫でてくれた君の匂い。君の真似をして咥えてみたけど、やっぱりむせた。君には慣れないらしい。

苦い君の匂い、もう帰ってこない君の匂い。
懐かしくて少し、泣いた。

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