シンデレラ

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帰らないで、って幾ら引き留めたって君は12時に帰るんでしょ？

悪戯に誘うのにまんまと引っかかったふりして君が楽しむのを見るのも、それを咎められないのも、惚れた弱みなんだよな。だってしょうがないよね、先に好きになった方の負け。俺は君に振り回される運命なんだろうな。

嗚呼シンデレラ、君のガラスの靴を脱がしてあげられるのは俺なの？今夜はもう帰さない、なんて甘い台詞は俺にはこっぱずかしい。だからって好きだと言えるようになる予定はないし、大好きなんて自分からは言わない。

12時を過ぎても帰らないなんて珍しいね、俺の彼女になる積もり？もしもこの後勇気が出たら言ってみようかな、冗談で。

大好きって。

やっぱり無理だよ、君の彼氏になりたいなんて絶対言えない。だって俺は本気にされてないみたいだし。無理無理無理、やっぱり無理、絶対言えない。どんなに親密な時間を過ごしたって、どんなに寄り添った時間を過ごしたって、君はどうせ12時には帰っちゃうんでしょ？

8時を通り過ぎて、9時も居なくなって、10時も過ぎて、11時、11時半。

「遅くまで昨日有難う」LINE送ったって返ってこない。それでも好きって俺盲目なのかな。嗚呼、でも昨日の余韻がまだ醒めてくれない。もしかしたら俺のこと好きなのかもって過信したのは悪い癖だったけどね。
ねえ、今日君は誰とどんな服でどんな靴で笑ってるの？

次君に会える日までわくわくしてるよ、君が好きそうな服を買ったり、ちょっとでも小綺麗に見えるように髪を切ったり。いつもとは違う言い方も練習したんだ、聞いてよ。

チューして？って。

その垂れ目も、綺麗な手も柔らかい髪も笑顔も、偶に俺のもの見たいって思えちゃうんだけどね。

やっぱり違うらしい。

今夜こそは絶対帰さないよ、